経済学部生のための数学 - 高校数学から偏微分まで -

経済学部生のための数学 - 高校数学から偏微分まで -

高校数学から偏微分まで,経済学部生に必要な数学の基礎的な内容について一冊にまとめた。

ジャンル
発行年月日
2023/10/30
判型
A5
ページ数
224ページ
ISBN
978-4-339-06128-4
経済学部生のための数学 - 高校数学から偏微分まで -
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  • 内容紹介
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【書籍の趣旨,特徴】
経済学部に進学して,ミクロ経済学やマクロ経済学といった理論経済学の講義を受講している学生の中には,「文系で,数学が苦手な自分にとって,内容が難しくて理解できない」と感じている方々が少なからずいます。本書はこのような学生に向けて書かれたものです。
本書を通じて,経済学部で必要となる基礎的な数学の知識や概念を身につけてもらい,経済学への理解と興味を深めてもらうことを目的としています。
入門レベルの理論経済学の講義で用いられる数学のうち,最も重要なのは微分ですが,高校で習う関数や数列,確率の知識なども必要となります。このため本書では,微分と偏微分に加え,経済学部で最低限必要と思われる数学の内容について,高校数学の内容から抽出したものも取り上げています。中学校で学んだ知識さえあれば読み進められるように,高校数学の内容についても詳しく説明しています。さらに,各章末にコラムを設け,本書で学ぶ数学が経済学の分野でどのように用いられているかについて紹介しています。また,定理や公式の導出過程を知りたい読者のために,それらの簡単な証明も載せました。
以上を踏まえて,全体の構成は以下のとおりとしています。

【構成】
第1章では,高校で学ぶ内容から,連立方程式,不等式,1次関数,2次関数,指数関数,対数関数,分数関数,無理関数など,経済学で必要となる方程式と関数の知識を抽出してまとめました。
第2章では,等差数列,等比数列,数列の和などの基礎的な知識から始まり,経済学で欠かせない無限等比級数や漸化式についても説明しています。
第3章では,1変数関数の微分の基本的な考え方を扱います。経済学では最適化問題の解法に微分を用いますが,その際に必要となる数学の基礎的な知識について説明します。大学で開講される「微分積分」の授業で扱う微分全般について取り上げています。
第4章では,多変数関数の微分(偏微分)を扱います。偏微分の考え方について説明し,2変数関数の極値問題の解法について述べています。
第5章では,確率の概念や基本的な性質について説明し,離散的な値をとる確率変数について扱っています。
最後に付録として,集合や場合の数の概念,1変数関数の積分と連続的な値をとる確率変数,ならびに代表的な確率分布について簡単に紹介しています。これらについては,必要に応じて参照する形で活用してください。

【著者からのメッセージ】
本書では多くの例や例題を載せ,演習問題も設けています。自分で問題を解くことで理解が深まるので,ぜひ挑戦してください。本書と出会った読者が数学に慣れ親しむことで,経済学の授業をより楽しめるようになることを願っています。

経済学を学ぶ上で数学は不可欠ですが,経済学部に進学した学生の中には,数学に対して苦手意識を持っている方々も少なからずいます.また,しばらく数学から離れていたという学生もおり,高校で学んだ内容を忘れてしまっていることも多々あります.

入門レベルの理論経済学の講義で用いられる数学のうち,最も重要なのは微分ですが,高校数学で習う関数や方程式,数列や確率の知識なども必要となります.

本書は,著者が中央大学経済学部で1年生を対象に数学科目を教える中で,最低限必要と感じた数学の内容を1冊にまとめたものです.高校数学の内容についても詳しく説明しましたので,中学校で学んだ知識があれば,経済学部で必要となる基礎的な数学を理解できるようになっています.

全体の構成は次のとおりです.

・第1章では,高校で学ぶ内容から,方程式,不等式,1次関数,2次関数,指数関数,対数関数,分数関数,無理関数など,経済学で必要となる方程式と関数の知識を抽出してまとめました.

・第2章では,等差数列,等比数列,数列の和などの基礎的な知識から始まり,経済学で欠かせない無限等比級数や漸化式についても説明しています.

・第3章では,1変数関数の微分の基本的な考え方を扱います.経済学では最適化問題の解法に微分を用いますが,その際に必要となる数学の基礎的な知識について説明します.なお,本章の3.2節,3.3節を読めば,高校で習う整式の微分とその応用について理解できるようになっています.そして3.4節以降が,多くの学生にとって大学で学ぶ新しい内容となっています.

・第4章では,多変数関数の微分(偏微分)を扱います.偏微分について理解し,極値問題を解けるようになることを目標としています.

・第5章では,離散的な値をとる確率変数,ならびにその期待値と分散について扱っています.ここでは,基本的な確率の考え方や性質について説明しており,さらに進んだ内容については付録で扱っています.

・最後に付録として,集合や場合の数の概念,1変数関数の積分と連続的な値をとる確率変数,ならびに代表的な確率分布について,簡単に紹介しています.これらについては,必要に応じて参照する形で活用してください.

第1章から第5章のうち,第3章と第4章はこの順番で学ぶ必要がありますが,それ以外の章についてはそれぞれ独立していますので,章の順序を気にせずに読むことが可能です.大学入学前に身につけた数学の知識に応じて,必要な箇所を学んでいけるようになっています.

なお,数学的に難しい内容を扱っている節には,*印をつけてあります.これらは適宜,飛ばす形で読み進めても構いません.

本書では,定理の簡単な証明なども載せていますが,それらを全部理解できなくても問題ありません.公式や定理などについては四角い枠で囲ってありますので,枠内で述べられている内容や式について理解してもらえれば十分です.また,例や例題も多く載せ,演習問題(問の略解はコロナ社書籍ページhttps://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339061284/に掲載)も設けています.自分で問題を解くことで理解が深まるので,ぜひ挑戦してほしいと思います.

各章末ではコーヒーブレイクとして,本書で学ぶ数学が実際の経済学の分野でどのように用いられているのかについて取り上げています.読者が数学を学ぶ上での動機づけとなれば嬉しく思います.

最後に,刊行にあたってお世話になったコロナ社の方々,ならびにさまざまな形で執筆を支えてくださった皆様に,心より御礼申し上げます.

2023年8月
小杉のぶ子

1.関数と方程式
1.1 整式の計算
 1.1.1 指数法則
 1.1.2 展開と因数分解
1.2 分数式と無理式
 1.2.1 分数式
 1.2.2 無理式
1.3 1次方程式と1次不等式
 1.3.11 次方程式
 1.3.2 連立方程式
 1.3.3 1次不等式
 1.3.4 連立不等式
1.4 2次方程式
 1.4.12 次方程式の解の公式
 1.4.2 2次方程式の解の種類の判別
1.5 高次方程式
 1.5.1 整式の割り算と剰余の定理
 1.5.2 因数定理
 1.5.3 高次方程式の解法
1.6 1次関数と直線の方程式
 1.6.1 関数とグラフ
 1.6.2 1次関数
 1.6.3 直線の方程式
 1.6.4 連立1次方程式とグラフ
 1.6.5 不等式と領域
1.7 2次関数
 1.7.12 次関数のグラフ
 1.7.2 グラフと2次方程式
 1.7.3 グラフと2次不等式
1.8 指数関数
 1.8.1 累乗根
 1.8.2 指数の拡張
 1.8.3 指数関数
1.9 対数関数
 1.9.1 対数
 1.9.2 対数の性質
 1.9.3 対数関数
 1.9.4 常用対数
1.10 分数関数
1.11 無理関数
1.12 逆関数
コーヒーブレイク:線形計画法

2.数列
2.1 数列
 2.1.1 数列
 2.1.2 数列の和の定義
2.2 等差数列
 2.2.1 等差数列
 2.2.2 等差数列の和
2.3 等比数列
 2.3.1 等比数列
 2.3.2 等比数列の和
2.4 和の公式
 2.4.1 和の記号Σ
 2.4.2 数列の和の公式
2.5 数列の極限
 2.5.1 数列の極限
 2.5.2 無限等比数列
 2.5.3 無限級数
2.6 漸化式
 2.6.1 階差数列
 2.6.2 漸化式
コーヒーブレイク:利息計算と数列
コーヒーブレイク:乗数効果と無限等比級数

3.1変数関数の微分
3.1 関数の極限
 3.1.1 関数の極限
 3.1.2 片側極限
 3.1.3 指数関数,対数関数の極限
 3.1.4 関数の連続性
3.2 微分係数と導関数
 3.2.1 微分係数
 3.2.2 導関数
3.3 整式の微分と応用
 3.3.1 整式の微分
 3.3.2 整式の微分の応用(接線,極値)
3.4 関数の積・商の微分法
 3.4.1 積の微分法
 3.4.2 商の微分法
3.5 合成関数と逆関数の微分法
 3.5.1 合成関数の微分法
 3.5.2 逆関数の微分法
3.6 対数関数と指数関数の導関数
 3.6.1 対数関数の導関数
 3.6.2 指数関数の導関数
3.7 高次導関数
3.8 微分の応用
 3.8.1 接線・法線の方程式
 3.8.2 平均値の定理*
 3.8.3 関数の増減と極値
 3.8.4 関数のグラフの概形
3.9 不定形の極限*
3.10 テイラーの定理*
 3.10.1 テイラーの定理*
 3.10.2 マクローリンの定理*
コーヒーブレイク:収益率の近似計算

4.多変数関数の微分
4.12 変数関数の極限
 4.1.12 変数関数とグラフ
 4.1.2 2変数関数の極限
 4.1.3 2変数関数の連続性
4.2 偏微分係数と偏導関数
4.3 高次偏導関数
4.4 合成関数の微分法
4.5 2変数関数の平均値の定理*
4.6 全微分
4.7 極値問題
4.8 陰関数
 4.8.1 陰関数定理
 4.8.2 陰関数の接線・法線
 4.8.3 陰関数の極値
4.9 条件付き極値
コーヒーブレイク:効用最大化と条件付き極値問題

5.確率
5.1 確率とその基本性質
 5.1.1 事象と確率
 5.1.2 確率の基本性質
5.2 条件付き確率と独立試行の確率
 5.2.1 条件付き確率
 5.2.2 ベイズの定理
 5.2.3 事象の独立と従属
 5.2.4 独立試行の確率
5.3 確率変数と確率分布
 5.3.1 確率変数
 5.3.2 確率分布
5.4 確率変数の期待値と分散
 5.4.1 確率変数の期待値
 5.4.2 分散と標準偏差
5.5 確率変数の和の期待値と分散
 5.5.1 確率変数の和の期待値
 5.5.2 独立な確率変数
 5.5.3 共分散と相関係数
コーヒーブレイク:リスクと標準偏差

付録
A.1 集合と命題
 A.1.1 集合
 A.1.2 命題と条件
A.2 場合の数
 A.2.1 場合の数の基本法則
 A.2.2 順列
 A.2.3 組合せ
 A.2.4 二項定理
A.3 1変数関数の積分
 A.3.1 不定積分
 A.3.2 定積分
 A.3.3 定積分と面積
 A.3.4 偶関数・奇関数と定積分
 A.3.5 無限区間における積分
A.4 連続型確率変数
 A.4.1 確率密度関数と分布関数
 A.4.2 連続型確率変数の期待値と分散
A.5 いろいろな分布
 A.5.1 二項分布
 A.5.2 ポアソン分布
 A.5.3 一様分布
 A.5.4 指数分布
 A.5.5 正規分布
索引

読者モニターレビュー【 あめ色玉ねぎ 様 (業界・専門分野:システム工学)】

本書は、高校数学レベルから大学で学ぶ基礎的な解析学の内容を網羅した基礎数学の入門書である。
タイトルは「経済学部生のための」となっているが、数学に自信のない理系学生にも勧められる内容である。
序盤は2次方程式のレベルから入るため、これまで数学に苦手意識を持っていた読者でもかなり読みやすいのではないかと思う。
本書後半の、高校数学以上の難易度の高い題材を取り扱うあたりからは定理の証明や例題の解答も丁寧に解説されているので、初めて高校数学以上の分野を学ぶ者でも理解がしやすい充実した内容となっており、大変読みやすい一冊であった。

読者モニターレビュー【 藤原 憲二 様 関西学院大学経済学部(業界・専門分野:大学教員、経済学専攻)】

本書はタイトルが示す通り、経済学部生が経済学を学ぶ際に必要な数学を解説した教科書である。著者は中央大学経済学部で初年次の数学を担当され、私立大学経済学部の現状に即して執筆された本書はすばらしい内容になっている。著者と同じく私立大学経済学部で初年次の数学を教える評者にとって教科書の選択肢が広がった。以下で評者が感じた本書の良い点と気になった点(悪い点ではない)を述べる。

本書を一読して最もすばらしいと思った点は高校数学の基礎的な部分から説明されていることである。残念な現実として経済学部生の中には1次関数のグラフがかけない人もいる。これでは経済学で最初に学ぶ需要・供給曲線分析も理解できない。この現状を反映してか世界中で使われているマンキューやクルーグマンの経済学入門の教科書では、ミクロ経済学やマクロ経済学に入る前に1次関数やグラフのかき方について説明されている。それと同様に本書の第1章では1次関数、1次方程式から説き起こし、中学・高校数学と大学の経済学部で必要な数学がスムーズに接続されている。経済数学の教科書の中には1次関数や2次関数は既知として、数列や平均変化率のような高校数学II・Bレベルから始めるものもある。しかし微積分の概念や計算を理解するには最も簡単な関数である1次関数や2次関数から始める方がよい。特に推薦入試で入学してきた学生や英・国・選択科目の3科目型一般入試で日本史や世界史を選択した学生には1次関数から始める本書のスタイルがなじみやすい。
評者が感じた第2の良い点は経済学にとって必要な分野に絞って説明されていることである。例えば三角関数は理工系では頻繁に使われる(と思う)が、評者が知る限り学部レベルの経済学では全く使われない。そうした学部の経済学で不必要な項目は載せず、必要な項目だけに絞ることで学生はどの程度まで勉強すればいいのかの見通しがつきやすくなる。実際、本書でカバーされている範囲をしっかり習得すれば、学部レベルの経済理論を学ぶときに不自由を感じることはないだろう。
他方で若干気になる箇所もある。もちろんこれらは本書の価値を下げるものではない。第1はホームページに掲載されている「問の解答」に答えしか載っておらず、不親切な印象を持った。個人的には答えだけを本書の巻末に載せ、その導出過程をオンラインサポートとして出版社のホームページに載せてほしかった。この点は本書の先行者である尾山・安田(2013年)や多鹿(2023年)に軍配が上がる。筆者は「問はすべて本文で説明した公式や解き方をそのまま使えばよいのでわざわざ詳しく載せる必要はない」、「答えの導出過程は教員が準備すべきだから載せる必要はない」と考えたのかもしれない。それでももう少し「問の解答」は詳しくしてほしかった。そうすると学ぶ学生と教える教員の双方の負担が減る上に、自習書としての価値も高まる。
第2はタイトルに反してやや経済学への応用例が少ない。特に本書の中核をなす第3章で説明される1変数関数の微分の応用がないのは大きな不満である。企業の利潤最大化、需要の価格弾力性、様々な比較静学など1変数関数の微分の経済学への応用例はぜひ欲しかった。

小杉 のぶ子(コスギ ノブコ)

掲載日:2024/01/12

「数学セミナー」2024年2月号

掲載日:2023/08/17

「数理科学」2023年9月号