図でよくわかる材料力学 (改訂版)

図でよくわかる材料力学 (改訂版)

材料力学の初学者に向けた一冊。改訂により,演習問題や有限要素法の基礎理論等を追記。

ジャンル
発行年月日
2023/05/15
判型
A5
ページ数
200ページ
ISBN
978-4-339-04681-6
図でよくわかる材料力学 (改訂版)
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定価

2,970(本体2,700円+税)

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材料力学の初学者向けの平易な書籍。従来の材料力学に加え,有限要素法を使用する際の基礎知識や材料の非均質性によって生じる破壊現象についても解説。改訂版ではコンセプトはそのままに,演習問題や有限要素法の基礎理論等を追記。

改訂版にあたって

コンピュータによる数値解析技術であるCAEは在宅でも使えるような環境が整えられました。CAEはインターネットを経由していつでもどこでも利用できる便利な手法になったといえます。しかし,コンピュータを用いた便利な手法がいかに普及しようと,材料力学はその基礎となる重要な知識です。

今回の改訂では,コンセプトはそのままに,演習問題と有限要素法の基礎理論を追記しました。また,コロナ社書籍紹介ページ(https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/97843390468161)に追加資料や一部の問題の詳細な解答を掲載しました。引き続き,材料力学のみならず破壊力学まで含めた強度評価の基本を俯瞰して理解するための構成としております。

本書の改訂にあたって,コロナ社編集部の方々にはご尽力いただきました。
ここに改めて御礼申し上げます。

2023年2月
著者
〔執筆担当〕
菊池 正紀:1,5,6,8章,和田 義孝:2,3,4,7章


はじめに

本書は,材料力学の初心者を念頭において執筆しました。

材料力学は,現場の技術者に役立つようまとめあげられた公式集といって差し支えありません。そこでは,複雑な式の展開はできるだけ行わず,簡単に解を求めることを目的としています。これは,いわば先人の偉大な知恵と経験の集積です。

本書でも,基本的にはそれを踏襲し,複雑な式はできるだけ排除して,平易に読めるよう努めました。最初の応力とひずみについての概念をしっかり理解したなら,あとの基本的な要素の変形,応力,ひずみの計算は,公式に基づいて行えばよいでしょう。

しかし,近年の技術の進歩に伴い,こうした伝統的な手法だけでは,日々現実に起こる事態を正しく説明できないことが,しばしば起こっています。例えば,従来の材料力学では,材料を均質体として扱って論じてきました。しかし,現実の材料は,さまざまな大きさの初期欠陥を多数持つ非均質材料であり,それが種々の破壊の原因となります。技術の進展により,機器,部品はますます小形化,集積化し,そうした微小な非均質性が,機器の強度に大きく影響することが多くなってきています。

本書では,破壊力学に関する解説を8章に設けました。破壊力学とは,上記のような,材料の非均質性から不可避的に発生する破損,き裂を対象とする学問です。筆者らは,通常の材料力学の先に破壊力学を位置づけることが,今後の材料力学教育の必然的な進路であろうと考えてきました。

また,7章では,いまや機械設計の基本的手法となっている,有限要素法を使用する際に必要な基礎知識について解説しています。

なお,本書の完成に当たっては,図表の整理などで東京理科大学理工学部機械工学科菊池研究室の大橋千夏さんにたいへんお世話になりました。また,コロナ社の関係各位には,数々の助言,忠告をいただきました。ここに心からお礼を申し上げます。

なお,本書は秀和システムから出版されていた『図解入門 よくわかる材料力学の基本』の改訂版です。この本を教科書に使用して講義をした10年の経験を踏まえて,本書では必要な箇所を整理,補筆しました。特に,2章では重ね合わせの原理を丁寧に解説しました。また,7章の有限要素法によるシミュレーションも大幅に書き改め,市販のCAEソフトウェアを使うために必要な知識を解説しました。

2014年2月
著者

1.応力とひずみ
1.1 垂直応力と垂直ひずみ 
 〔1〕垂直応力 /〔2〕垂直ひずみ 
1.2 せん断応力とせん断ひずみ 
 〔1〕せん断応力 /〔2〕せん断ひずみ 
1.3 応力とひずみの関係 
 〔1〕垂直ひずみと垂直応力の関係 /〔2〕代表的な材料定数 /
 〔3〕せん断応力とせん断ひずみの関係 /〔4〕変形量の計算
 (コラム)材料力学は微小変形だけを扱う? 
1.4 応力 ― ひずみ線図 
 〔1〕材料強度の試験 /〔2〕応力 ― ひずみ線図 /〔3〕弾性変形,降伏応力 /〔4〕塑性領域,加工硬化,くびれ 
 (コラム)弾性ひずみと塑性ひずみの違いは? 
1.5 さまざまな応力 ― ひずみ曲線 
 〔1〕0.2%耐力 /〔2〕延性材料と脆性材料 
 (コラム)降伏応力は理論的に予測できる? 
1.6 応力とひずみの測定法 
 〔1〕ひずみゲージ /〔2〕光弾性法 
 (コラム)塑性ひずみ=転位の発生と移動 
1.7 安全率と許容応力 
 〔1〕許容応力 /〔2〕基準強さと安全率 
 (コラム)クリープひずみ 
1.8 疲労に対する基準強さ 
 〔1〕疲労 /〔2〕S ― N線図と疲労限
1.9 疲労はなぜ起きるのか 
 〔1〕材料の不均質性 /〔2〕応力集中 /〔3〕疲労の原因は応力集中 
 (コラム)骨と金属の違い 
1章のまとめ 
 演習問題 

2.引張りを受ける棒
2.1 重ね合わせの原理 
2.2 棒の引張りと圧縮 
2.3 異なる材料を組み合わせた棒 
 〔1〕複合材料の単純なモデル /〔2〕各部の応力,ひずみ,および伸びの計算 
 (コラム)複合材料 
2.4 骨組み構造 ①:静定問題 
 〔1〕2本の棒でできた骨組み構造の問題 /〔2〕解法:力のつり合いを考える
2.5 骨組み構造 ②:不静定問題 
 〔1〕3本の棒が1点でピン結合されている問題 /〔2〕解法:つり合いと変位の条件を考える 
2.6 熱応力 
 〔1〕熱ひずみと熱応力 /〔2〕熱応力は熱ひずみと直接には関係しない 
2章のまとめ 
 演習問題 

3.はりの曲げ
3.1 はり 
 〔1〕はりの荷重方法と支持方法 /〔2〕支持方法の組合せ 
3.2 せん断力と曲げモーメント 
 〔1〕曲げモーメント /〔2〕せん断力と,正負の向き /〔3〕曲げモーメントの正負の向き 
3.3 せん断力線図と曲げモーメント線図 
 〔1〕S.F.D.とB.M.D. /〔2〕S.F.D.の描き方 /〔3〕計算例:中央に集中荷重を受ける単純支持はりのB.M.D.とS.F.D. /〔4〕計算例:分布荷重を受ける単純支持はりのB.M.D.とS.F.D.  
 3.4 S.F.D.とB.M.D.の例 
 〔1〕複数の集中荷重を受ける単純支持はり /〔2〕等分布荷重を受ける単純支持はり /〔3〕自由端に集中荷重を受ける片持はり /〔4〕二つの集中荷重を受ける片持はり /〔5〕等分布荷重を受ける片持はり 
3.5 はりに生じる応力 
 〔1〕断面形状によるたわみ方の違い /〔2〕曲げ応力 /〔3〕中立面と中立軸 /〔4〕はりのたわみ方 /〔5〕断面二次モーメントと曲げ剛性 /〔6〕曲げ応力の求め方 /〔7〕断面一次モーメントと断面二次モーメント /〔8〕はりに生じるせん断応力 
3.6 はりのたわみ 
 〔1〕はりのたわみの考え方 〔2〕計算例:自由端に集中荷重を受ける片持はり /〔3〕計算例:中心に集中荷重を受ける単純支持はり 
3.7 重ね板ばね 
 〔1〕平等強さのはり /〔2〕重ね板ばね /〔3〕組合せはり
3章のまとめ 
 演習問題 

4.軸のねじり
4.1 中実丸軸 
 〔1〕動力を伝達する軸 /〔2〕軸に生じる応力とひずみ /〔3〕断面二次極モーメントとねじり剛性 
4.2 中空丸軸 
 〔1〕軽量な中空丸軸 /〔2〕中実丸軸との径の比による違い
4.3 はりの曲げと軸のねじりの相似点 
 たわみとねじりの計算手順の比較
4.4 伝動軸 
 〔1〕軸が伝える仕事 /〔2〕中実丸軸と中空丸軸の比較 
4.5 円筒形コイルばね 
 〔1〕素線に生じる応力とひずみ /〔2〕半径と巻数と応力の変化
4.6 円錐形コイルばね 
 素線に生じる応力とひずみ
4章のまとめ 
 演習問題 

5.多軸応力場での応力とひずみ
5.1 三次元場での応力の定義 
 〔1〕応力テンソルの定義 /〔2〕外力と表面力の関係 
 (コラム)テンソルについて 
5.2 工学ひずみ  
 〔1〕工学ひずみの定義 /〔2〕せん断ひずみの意味
5.3 一般化されたフックの法則 
 〔1〕三次元場での応力 ― ひずみ関係 /〔2〕体積ひずみ
5.4 平面応力と平面ひずみ 
 〔1〕二次元近似 /〔2〕平面応力近似 /〔3〕平面ひずみ近似
5.5 内圧を受ける薄肉円筒 
 薄肉円筒の問題
 (コラム)内圧と外圧を受ける薄肉円筒の応力 
5.6 焼きばめ問題 
 鋼管と銅管の焼きばめ 
5.7 応力の座標変換と主応力 
 〔1〕主応力 /〔2〕主せん断応力 /〔3〕モールの応力円
5.8 ロゼットゲージによる応力測定 
 ロゼットゲージ
5.9 多軸応力状態での降伏条件 
 二つの降伏条件
 (コラム)寸法効果 
5章のまとめ 
 演習問題 

6.応力集中
6.1 円孔の応力集中 
 〔1〕円孔縁での応力分布 /〔2〕応力集中率 /〔3〕円孔縁での応力成分 /〔4〕有限要素法による応力集中の解析例 /
 〔5〕二つの円孔の干渉
6.2 応力集中のいくつかの例 
 〔1〕四角形の孔による応力集中 /〔2〕隅部の応力集中 /〔3〕だ円孔の応力集中
6.3 応力集中の原因 
 応力集中源の発生
6.4 応力集中による破損の例 
 〔1〕輸送船Schenectady号の破壊事故 /〔2〕ジェット旅客機コメット号の墜落事故 /〔3〕日本航空123便の墜落事故 /〔4〕アロハ航空の飛行機上部剥離事故 /〔5〕もんじゅの温度計ケースの破損事故 /〔6〕ドイツの高速鉄道の脱線事故 /〔7〕新幹線の台車の疲労破損事故 
 (コラム)新聞を読んで材料力学を 
6.5 応力集中の緩和 
 隅部の応力集中の緩和
6.6 応力集中を考慮した設計 
 〔1〕切り欠き係数β125 /〔2〕αとβの関係 /〔3〕応力集中部の監視
 (コラム)身近な応力集中の例 
6章のまとめ 

7.コンピュータによるシミュレーション…有限要素法
7.1 有限要素法とは 
 〔1〕コンピュータによる解析 /〔2〕理論と実現方法 /〔3〕実行環境と有限要素法ソフトウェア /〔4〕有限要素法の適用範囲 /〔5〕CAEシステム
 (コラム)有限要素法は自然現象をどこまで表現できるでしょうか 
7.2 有限要素法の理論 
 〔1〕仮想仕事の原理 /〔2〕有限要素法の定式化 /〔3〕有限要素法による数値解析例 
7.3 有限要素法による解析 
 解析作業の流れ
7.4 モデル作成/メッシュ生成/境界条件とサンブナンの原理 
 〔1〕モデル作成 /〔2〕メッシュ生成 /〔3〕境界条件設定
7.5 境界条件にまつわる大切なポイント 
 〔1〕剛体変位と剛体回転 /〔2〕対称境界条件 /〔3〕4分の1対称,8分の1対称 /〔4〕接触問題の扱い方
7.6 解析/可視化/適切な解析結果の見方とその検討 
 〔1〕解析 /〔2〕可視化 /〔3〕適切な解析結果の見方とその検討 /〔4〕計算結果の品質保証 
 (コラム)有限要素法の達人になる近道は? 
7.7 いくつかの失敗事例の紹介 
7章のまとめ 
 演習問題 

8.機器の保守・管理
8.1 破壊の力学 
 〔1〕材料の破壊過程 /〔2〕破壊力学
8.2 き裂先端の応力と応力拡大係数 
 〔1〕き裂にかかる力のモード /〔2〕応力拡大係数
8.3 破壊条件と破壊靱性 
 〔1〕脆性破壊と延性破壊 /〔2〕脆性破壊の破壊条件
 (コラム)破壊はいつでも悪者でしょうか 
8.4 機器の保守・管理の手順 
 機器の保守・管理に必要な技術
8.5 応力拡大係数の求め方 
 〔1〕引張りを受ける帯板のき裂 /〔2〕さまざまなき裂の応力拡大係数
8.6 破壊靭性値の求め方 
 〔1〕破壊靭性値の板厚依存性 /〔2〕破壊靭性試験法の概略
8.7 疲労き裂進展予測 
 パリス則によるき裂進展予測
8.8 フラクトグラフィ 
 いくつかの破面形態
 (コラム)さらに進んで学ぶには 
8章のまとめ 

 参考文献 
 演習問題解答 
 索引 

菊池 正紀(キクチ マサノリ)

掲載日:2023/11/07

日本機械学会誌2023年11月号

掲載日:2023/09/19

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