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シリアスゲーム

メディアテクノロジーシリーズ 5

シリアスゲーム

今後この分野の研究・開発に取り組む方々の共通基盤となる知見を提供する事に主眼を置き,シリアスゲームの成り立ちから展開,各分野の事例や新たな取組みを整理して論じるとともに,その意義や社会に起こした影響を解説。

発行年月日
2024/03/18
定価
3,960(本体3,600円+税)
ISBN
978-4-339-01375-7
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

読者モニターレビュー【 N/M 様(業界・専門分野:総合情報学[情報科学])】

掲載日:2024/03/14

本書は「メディアテクノロジーシリーズ」の5巻目に位置する書籍である.本巻では「シリアスゲーム」についての記述がなされている.

1章では,シリアスゲームとは何かということを理解する上で,そもそも「ゲーム」というものの概念的な定義や,「シリアスゲーム」の定義・範囲及び,それに関連した「ゲーミフィケーション」等の関連用語の類似点や相違点についての解説がなされている.

私が「ゲーミフィケーション」という用語を初めて知り,その概念に興味深いと感じたのは,自身が卒業した大学のWebシラバスであった.閲覧可能な年度でみると,少なくとも2018年度頃から現在まで『ゲーミフィケーション』という名の反転学習型の講義(事前に教科書を読んで,事前学習個所の内容を問う問題に解答し,その内容をグループ討論や,自身の考案したゲーミフィケーションをプレゼンするような)が行われているようだ(因みに使われているテキストは,本書でも1章の引用・参考文献21),2章の引用・参考文献32)にも挙げられている『井上明人(著):「ゲーミフィケーション<ゲーム>がビジネスを変える」,NHK出版』).学習内容を見ていると,この講義の教科書,若しくは参考文献になりそうな気が個人的にはしている.

2章では,シリアスゲームの歴史的背景について書かれており,この1章と2章で,シリアスゲームというもの概念とその広がりが理解できるようになっている.

3章〜5章では,シリアスゲームのデザインやシリアスゲーム開発のためのメディア,開発方法などが解説してある.それらを踏まえて,6章〜7章では開発例として健康をテーマとした,リハビリやヘルスケアを行うエクサゲーム,地方創生ゲームを取り上げて,これらの事例についての解説なされている.個人的には,「PokémonGO」や「Pokémon Sleep」を愛用しているが,これらも社会全体(や個人)が抱える問題(運動不足や睡眠障害など)を解決するシリアスゲームの一種では思った.

最後の8章では,今後の課題と展望ということで各章の論点のまとめと,これまでの課題と展望を振り返りつつ,これからの課題と展望という未来に向けた内容で締め括られている.

最後に,日本におけるシリアスゲームやゲーミフィケーションに関連した専門書は,現段階(2024年3月現在)ではあまり多く出版されていないような状況のように,個人的には思われる.そういった状況から,本書はシリアスゲームやゲーミフィケーションについて丁寧な記述がなされており,初学者の方にもオススメできると思う.また,上記にも挙げたように大学等の講義の教科書や参考書としても十分活用できるものと思われる.

読者モニターレビュー【 てらマン 様(業界・専門分野:教育関係 )】

掲載日:2024/03/12

本書は「メディアテクノロジーシリーズ」の中でも,現時点における日本語で書かれた「シリアスゲーム」の貴重な書籍となっている。

編著の藤本徹先生は2007年にも「シリアスゲーム」という書籍を出版されているが,そこから17年が経過した現時点までの「シリアスゲーム」の広がり,特に日本国内での事例が豊富に紹介され,その広がりを知ることができる。また,特に第5章ではシリアスゲームの制作技法が説明されるなどこれからシリアスゲームを制作したい方にとっても有用な情報が記載されている。

第1章では「シリアスゲーム」とその周辺概念,特に2010年代に活発となった「ゲーミフィケーション」との対比がなされている。またアナログゲームも包含されることを述べている。第2章ではシリアスゲームの歴史が述べられ,第3章では学習理論と関連させながら実際のシリアスゲームの活用例が記されている。第4章では同じゲームを異なるメディアで展開した事例が説明されているが,アナログゲームも触れられている点や利用したメディアによって効果が異なることが実証的に示されており興味深い。第5章は上述のとおりである。

第6・7章は具体例としてエクサゲーム(エクササイズのゲーム),地方創生ゲームが取り上げられており,シリアスゲームの幅広い展開を知ることができる。ただし,これらはゲーミフィケーションの事例として扱われるものでもあり,第1章での「シリアスゲーム」と「ゲーミフィケーション」との対比を考えると少々混乱してしまった。第8章は全体のまとめと今後の展望である。

以上のように,特に日本におけるシリアスゲームの現在地を知るうえで本書は入門書であり専門書でもある。シリアスゲームやゲームの教育・実社会への活用を考えているすべての方に一読をおすすめする。

ゲームメーカーズ 様による本書プレゼントキャンペーン

掲載日:2024/03/05

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