新版 工作機械工学

機械系 大学講義シリーズ 25

新版 工作機械工学

めざましい社会の発展を踏まえ,工作機械に対するさらなる高精度化,高能率化,複合機能化の要求に即して,最新の内容も含め刷新した。

ジャンル
発行年月日
2019/07/25
判型
A5 上製
ページ数
254ページ
ISBN
978-4-339-04103-3
新版 工作機械工学
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定価

3,190(本体2,900円+税)

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初版第1刷から30年が経過した。そこで,初版と同じく工作機械の利用技術に主眼を置きつつ,めざましい社会の発展を踏まえ,工作機械に対するさらなる高精度化,高能率化,複合機能化の要求に即して,最新の内容も含め刷新した。


工作機械は,人間社会の必要とする物を生産するうえで重要な手段の一つである。このことは,「一国の技術レベルはその国の工作機械技術のレベルに左右される」という事実により裏付けられている。しかし,その重要性にもかかわらず,わが国では「工作機械」は一般社会,あるいは場合によっては技術者の社会でもなじみのない言葉の一つである。これは,工作機械の特質が産業を支える「縁の下の力持ち」的なものであることによるのであろう。しかし,機械技術者の間でも工作機械が特殊なものとみなされる理由の一つとして,大学における工作機械の講義は,従来その設計技術に重点を置きすぎたことがあげられる。すなわち,多くの場合に,かの有名なSchlesingerの著書,あるいはそれに類似のテキストを使用して設計技術主体の講義が行われている。しかし,将来工作機械技術者になることを希望する少数の学生を除けば,大多数の学生にとって,これは無意味と感じられ,履習するものは限られてくる。一般的に多くの技術者および学生にとって,工作機械の設計技術よりは,工作機械をいかに効率よく利用するか,いわゆる工作機械の利用技術のほうが重要である。残念なことに,これまで出版された工作機械に関する書籍には,このような工作機械の利用技術を主眼としたものは数少なく,また,その内容も不十分である。しかも,従来,このような工作機械の利用技術は等閑視されていた嫌いがある。 

ところで,人間社会の発展とともに,必要な「物」に要求される性能は多様化,高度化しつつある。これは,工作機械の高精度化,高能率化および複合機能化を要求するようになるが,これらの要求に工作機械単体で対処するのは困難である。そこには,工作機械-工具-工作物系内の工作機械,あるいは生産システム内の一要素としての工作機械というシステム的な観点が必要となる。その結果,従来にも増して工作機械の利用技術が重要視されることになる。しかも,生産性の向上のために,例えばフレキシブル生産システムで代表されるように,工作機械の自動化,複合加工化がこのシステム的な発想のもとで進行している現状では,工作機械の利用技術はますます重要な意味を持ってくる。

ただし,工作機械を効果的に利用するには,その機械の設計方法や構造等に熟知していることが望ましいのも事実である。しかし,満足し得るレベルまで設計技術と利用技術の両者を同時に習得するのは一般的に困難であろう。そこで,工作機械がブラックボックス化しつつある現状を踏まえて,おもに工作機械の利用技術を対象にまとめたのが本書である。ただし,前述のような主旨から,よりよい利用技術を習得するうえで必要な最低限の設計技術の知識も説明している。

以上のことより,本書名を「工作機械工学」とした意図はご理解いただけると思うが,このように本書は,従来とは異なった観点から工作機械について論じているので,学生のみならず,工作機械をいかに有効に利用するかという点に関心のある技術者の方々にも役立つものと考えている。なお,本書は,1章,3章,6.1~6.3節を森脇が,2章,4章,5章,6.4節,7章を伊東が分担し執筆した。終わりに,新しい意図のもとに本書を執筆する機会を与えていただいた東京工業大学臼井英治教授,ならびに出版に際していろいろとご苦労いただいた(株)コロナ社に深甚の謝意を表したい。
1989年盛夏 伊東 誼・森脇俊道 


新版の発行にあたって
1989年に初版を発行してから約30年が経過した。この間に工作機械技術は格段に進化し,また関連する研究の進展も目覚ましいものがある。特に,この間における大きな変化はコンピュータや情報処理関連技術の進歩であろう。工作機械は数値制御(NC:Numerical Control)化されたことによって,つねに最先端のコンピュータ技術を利用して素晴らしい発展を遂げた。その結果として単に数値制御技術の高度化のみならず,工作機械の形態も大きく変化させることとなった。具体的にはマシニングセンタ(MC:Machining Center),ターニングセンタ(TC:Turning Center)あるいは複合工作機械など,汎用工作機械の時代には考えられなかったような新しい形態を有する工作機械が数多く誕生した。また,同時に工作機械のハードウェアの面からみれば,速度,生産性,精度も飛躍的に向上した。その裏には工作機械に関する地道な研究・開発の努力があったことを忘れてはならない。

産業界における工作機械の位置づけをみると,わが国の工作機械の生産高は,1982年にドイツを抜いて世界一となり,2009年に1位の座を中国に譲ったが,以降世界第2位の地位を堅持している。工作機械産業がその国のものづくり産業の指標の一端を示すことを考えればこのことはうなずけよう。しかも,わが国で生産される工作機械は90%以上がNC 工作機械であり,その60%ほどが海外に輸出されている。わが国の工作機械はドイツと並んで技術的にも世界の最高水準を維持し,わが国のみならず世界のものづくり産業に貢献していることは疑う余地もない。

さて,幸いにも本書は改訂版も含め,発行以来多くの方々にご愛読いただいて,版を重ねることができた。しかしながら上述したように,昨今の工作機械関連技術の進化は目覚ましく,新たな版をおこすことが適切であると判断し,新版の発行を思い立つに至った。新版を執筆するにあたり当初の理念,すなわち「工作機械を設計する側と,利用する側の双方に配慮した書とすること」は堅持し,章立ては基本的に初版とほぼ同じとしたが,できるだけ最新の情報も含めることとして内容を一新した。

工作機械を利用する立場からすれば,自動化が進んだこんにち,工作機械の中身はブラックボックス化して,使用法を理解すればよいという考え方も成り立つ。しかしながら,工作機械はただ運転すればよいというものではなく,工作機械の基本的な特性を理解して初めてより効果的に利用することができるし,また加工プロセスを介して最終的な加工結果が得られることから,加工に関する基礎的な知識も必要となるであろう。さらに機械工学の立場からすれば,工作機械は機構,構造,制御など多くの工学の集大成であるといえる。その意味ではやや専門的になったきらいはあるが,工作機械を設計する立場からの考え方も含めて必要な説明を行っている。本書が大学で機械工学を学ぶ学生諸君のお役に立てば幸いであり,またさらに工作機械をより広く理解しようとする専門家の入門書として利用していただければ望外の喜びとするところである。

なお,本書は1章,3章,5.1節~5.3節を森脇が担当し,2章,4章,5.4節,6章,付録を伊東が担当した。末筆ながら「新版 工作機械工学」の出版に関してコロナ社の関係者各位には深甚の謝意を表する。
2019年春  伊東 誼・森脇俊道 

1. 工作機械工学の概要
1.1 工作機械の定義と工作機械の課題
1.2 工作機械の分類
1.3 工作機械と工作機械工学の歴史
 1.3.1 産業革命以前
 1.3.2 産業革命から第二次世界大戦まで―汎用工作機械の発明と発展―
 1.3.3 第二次世界大戦以降―数値制御工作機械の発展―
 1.3.4 工作機械の加工性能向上の歴史
演習問題

2. 汎用NC工作機械の基本的な構造構成
2.1 工作機械の本体構造設計の基礎知識
 2.1.1 変位基準設計の概要
 2.1.2 軽量・高剛性,高減衰能,ならびに小さな熱変形という設計の原則
 2.1.3 構造設計の三大属性―高速性,高精度化,ならびに重切削性
2.2 工作機械の形状創成運動と案内精度
2.3 汎用NC工作機械の主要な構造構成
 2.3.1 本体構造
 2.3.2 主軸構造と主軸駆動系
 2.3.3 案内構造と送り駆動系
2.4 モジュラ構成と進みつつあるプラットフォーム方式(加工空間重視のモジュラ構成)
 2.4.1 モジュラ構成の定義,ならびに四原則
 2.4.2 メーカ主体のモジュラ構成―階層方式とユニット方式
 2.4.3 ユーザ主体のモジュラ構成―プラットフォーム方式
演習問題

3. 工作機械と数値制御
3.1 サーボ機構とその付属装置
3.2 同時制御と補間
3.3 NCプログラミング
3.4 多軸加工機と複合加工機
3.5 高度なNCの制御と工作機械
演習問題

4. 工作機械と計測システム
4.1 センサ・フュージョン
4.2 工作物の形状,寸法および表面品位
 4.2.1 工作物の形状および寸法
 4.2.2 工作物の表面粗さ,その他
4.3 工作物および切削・研削工具の取付け状態
4.4 切削・研削抵抗,工具損耗,ならびに切りくず形態
 4.4.1 工具損耗
 4.4.2 切りくず形態
4.5 機械の稼働状態
演習問題

5. 工作機械の特性解析および試験・検査
5.1 工作機械に要求される性能と評価項目
5.2 工作機械の特性解析と評価
5.3 工作機械の評価試験と受入れ試験
5.4 経済性評価
 5.4.1 加工コストの算出方法
 5.4.2 加工コストの削減に関わる指針
演習問題

6. 工作機械とユーザ支援技術
6.1 一般的なユーザ支援技術
6.2 加工空間の連環とプラットフォーム方式の有効利用
6.3 予防保全を含む品質保証設計
6.4 廃棄性設計
演習問題

付録
参考文献
索引

伊東 誼(イトウ ヨシミ)

森脇 俊道(モリワキ トシミチ)

「月刊トライボロジー」2019年8月号(新樹社) 掲載日:2019/08/16

掲載日:2022/10/06

日本機械学会誌2022年10月号広告

掲載日:2021/10/06

「日本機械学会誌」2021年10月号広告

掲載日:2020/11/09

「日本機械学会誌」2020年11月号広告

掲載日:2020/11/05

第71回 塑性加工連合講演会講演論文集広告

掲載日:2019/10/05

日本機械学会誌2019年10月号広告