超音波モータ

音響テクノロジーシリーズ 26

超音波モータ

超音波モータの原理と具体的な構成例,弾性体の振動,圧電現象,電気等価回路をまとめた。

ジャンル
発行年月日
2023/09/28
判型
A5 上製
ページ数
264ページ
ISBN
978-4-339-01165-4
超音波モータ
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定価

4,730(本体4,300円+税)

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超音波モータの歴史と特徴,原理と具体的な構成例について述べた。基礎となる弾性体の振動,圧電現象,電気等価回路もまとめた。さらに,読者が実際に超音波モータを製作できるよう,駆動回路,評価法,測定法についても説明した。

【主要目次】
1.超音波モータの歴史と特徴
2.弾性固体の振動の基礎
3.圧電の基礎
4.進行波型超音波モータの原理
5.定在波型超音波モータの原理
6.超音波モータの実現例

超音波モータは圧電素子により発生した数十kHzの振動でロータやスライダを摩擦駆動する方式のモータである。コイルと磁石による電磁力を用いた一般的な電磁型モータと比べると,回転数は低いがトルクが大きい。このため,減速ギヤが不要,バックラッシ(がたつき,あそび)がない,応答速度が速いなどの特徴を有している。また,薄型や円環型など電磁型モータでは実現しにくい形状に仕上げることができる。さらに,外部ブレーキ機構を設けなくとも電源を切れば摩擦力で位置が保持されるため,位置決め制御用アクチュエータとして有用である。ある場所に素早く位置決めして,そこでしばらく位置を保つような動作に適している。コイルや磁石を用いないため,磁界を嫌う精密測定機器などにも利用できる。

振動から回転力を得るアイディアは1章で述べるように古くからいくつかある。今日につながる実用的な超音波モータは,1980年頃の指田年生による研究が発端となり,1990年代までは日本での実用開発が活発であった。それ以来,カメラの自動焦点合わせ機構を中心に応用されている。このほか,自動車内装品,コピー機,カードリーダ,ロールカーテン巻き上げなどについても多くの具体的な検討がなされ,その一部は実機に実装された。今後もロボットをはじめ,応用先の広がりが考えられる。1990年前後の日本での超音波モータ開発ブームは今日では沈静化しているが,いくつかの企業では継続的に改良が加えられており,最近もカメラ用などで新モデルが登場している。一方,微小電気機械技術の発展に合わせてマイクロモータ実現の手法の1つとして日本や欧州で研究が進められた。超音波モータに関する学術論文の出版数は年々増加傾向にある。

超音波モータ技術は,電気・電子回路,圧電材料,機械システムの分野にまたがっており,圧電振動や電気機械変換のさまざまな概念や解析法を学ぶためにも有効な題材である。このような電気系と機械系の境界領域・複合領域を勉強することは工学系の将来を担う学生諸君にとって重要なことであり,超音波モータはその教材としての価値も高いと考えられる。

本書では,超音波モータの歴史と特徴の解説に始まり,進行波型と定在波型という2つの代表的な超音波モータの原理と具体的な構成例について述べている。また,その基礎となる弾性体の振動,圧電現象,圧電振動子の電気等価回路などについてもまとめており,超音波振動子や圧電トランスデューサの入門書としての側面も有している。さらに,読者が実際に超音波モータを製作し,実験を行えるよう,駆動回路,モータ特性の評価法,超音波振動の測定法などについてもできる限り説明した。工学系の学生から超音波モータの概要を知りたい企業の開発者まで,本書を有効に利用いただければ幸いである。

なお,本書の執筆分担は以下のとおりである。
執筆分担
中村健太郎 2章,5章,6.5節,6.6.2項,6.8節~6.10節,付録(A.3.4項~A.3.5項以外)
黒澤実 1章,4章,6.7節
青柳学 3章,6.1節~6.4節,6.6.1項,付録(A.3.4項~A.3.5項,A.4節)

2023年7月
著者を代表して 中村健太郎

1.超音波モータの歴史と特徴
1.1 超音波モータの歴史
 1.1.1 初期の研究
 1.1.2 進行波型超音波モータ
 1.1.3 定在波型超音波モータ(異形縮退モードの利用)
 1.1.4 マイクロ超音波モータ
1.2 超音波モータの特徴と得られる性能
 1.2.1 振動子に用いる圧電材料の特徴とモータ特性:変位量から速度へ
 1.2.2 振動子に用いる圧電材料の特徴とモータ特性:力をどう捉えるか
 1.2.3 エネルギーとパワー,そして変換効率
 1.2.4 摩擦駆動:変換(伝達)効率と寿命
 1.2.5 マイクロ化におけるメリットと可能性
1.3 超音波モータ概観
 1.3.1 変換方式による分類
 1.3.2 実用化が進んでいる応用事例
引用・参考文献

2.弾性固体の振動の基礎
2.1 固体振動に関する基礎
2.2 振動子の電気等価回路の基礎
2.3 弾性固体の性質
2.4 細棒の縦振動
2.5 ねじり振動
2.6 たわみ振動
2.7 一般的な波動方程式
2.8 円板や円環の振動モード
引用・参考文献

3.圧電の基礎
3.1 圧電の基礎
 3.1.1 圧電効果
 3.1.2 圧電方程式
3.2 圧電横効果縦振動子と等価回路
 3.2.1 圧電横効果の圧電方程式
 3.2.2 振動モードの導出
 3.2.3 等価回路
 3.2.4 メイソンの等価回路(横効果の場合)
 3.2.5 電気音響変換式との対応
 3.2.6 インピーダンス形式の等価回路
3.3 たわみ振動子
 3.3.1 運動方程式の誘導
 3.3.2 両端自由振動子の共振周波数
 3.3.3 入力アドミタンス
 3.3.4 力係数
 3.3.5 等価回路
3.4 ランジュバン型振動子
3.5 圧電振動子の電気的特性測定
 3.5.1 等価回路による電気的特性
 3.5.2 自由アドミタンスYfの周波数特性と電気的諸定数の測定(A形共振)
 3.5.3 自由インピーダンZfの周波数特性と諸定数の測定(B形共振)
 3.5.4 力係数の測定法
引用・参考文献

4.進行波型超音波モータの原理
4.1 進行波型超音波モータの動作原理
 4.1.1 弾性波の伝搬と粒子の動き
 4.1.2 波動と移動体の接触と摩擦駆動
4.2 回転型の進行波型超音波モータの動作原理
 4.2.1 縮退モードとモードの回転
 4.2.2 振動モードと励振方法
 4.2.3 円型進行波型超音波モータの実例
4.3 リニア型の進行波型超音波モータの動作原理
 4.3.1 たわみ波を励振する振動系
 4.3.2 整合負荷条件
 4.3.3 モータ特性
4.4 弾性表面波モータ
 4.4.1 モータの構成と摩擦駆動
 4.4.2 波動の駆動方法と弾性表面波素子
 4.4.3 出力特性
4.5 動作解析
 4.5.1 摩擦力伝達
 4.5.2 予圧分布と駆動力
 4.5.3 接触状態と摩擦駆動のモデル化
引用・参考文献

5.定在波型超音波モータの原理
5.12 つの振動による楕円振動の実現
5.2 モータの基礎動作
5.3 動作解析
5.4 回転型超音波モータの実現例と特性
5.5 摩擦力制御の改善
5.6 リニア型の高出力モータの実現例
引用・参考文献

6.超音波モータの実現例
6.1 進行波型回転モータ(面内振動利用)
6.2 セイコーの円板の定在波型超音波モータ
6.3 セイコーエプソン突っつき型(L1-B2結合,回転型)
6.4 L1-B2リニアモータ
6.5 定在波型回転モータ
 6.5.1 直径5mmの定在波型回転モータ
 6.5.2 メガトルク定在波型回転モータ
6.6 多自由度モータ
 6.6.1 円板型多自由度モータ
 6.6.2 棒型多自由度モータ
6.7 2つのボルト締め振動子によるリニアモータ
 6.7.1 振動子の構成と特性
 6.7.2 重量ステージ駆動制御特性
6.8 単相駆動マイクロリニアモータ
6.9 大型リニアステージ
6.10 超音波モータの制御
 6.10.1 超音波モータの開ループ特性
 6.10.2 位置決め制御
 6.10.3 回転数制御
 6.10.4 駆動電流による回転速度制御
引用・参考文献

付録
A.1 摩擦材料
 A.1.1 超音波モータの摩擦材料に望まれる特性
 A.1.2 摩擦特性の評価方法
 A.1.3 摩擦特性の特性例
A.2 超音波モータの駆動回路
 A.2.1 リニア増幅器による方式
 A.2.2 スイッチング回路による方式
 A.2.3 スイッチング方式駆動回路の例
 A.2.4 リニア増幅器方式のための信号発生回路
A.3 振動測定法
 A.3.1 レーザドップラ面外測定
 A.3.2 レーザドップラ面内測定
 A.3.3 光ファイバ式変位計
 A.3.4 電気容量変化法
 A.3.5 渦電流検出法
A.4 負荷特性の測定法
 A.4.1 超音波モータの負荷特性
 A.4.2 回転数と出力トルクの測定法
 A.4.3 過渡応答から負荷特性推定する方法
引用・参考文献
索引

読者モニターレビュー【 ゆめたろう 様 (業界・専門分野:研究機関・機械音響)】

読者が超音波モータの製作から実験まで行えるように書かれた本です。

今まで超音波モータといった超音波振動子や圧電トランスデューサの開発をはじめると、
基礎理論・設計と製作・評価の要素ごとに必要な情報を論文や書籍からピックアップする必
要があり、情報を集める作業が大変な労力でした。ところが、本書はその作業から解放して
くれます。冒頭で述べたように、本書は実際に読者が超音波モータの製作から評価実験まで
行えるように想定されており、本書のみで「基礎理論(2 章・3 章)」・「設計と製作(4章・
5 章)」・「評価(付録)」を体系的に学ぶことができます。

超音波モータの駆動回路や評価方法をここまで具体的に記載している書籍はなかったよう
に思います。私自身はこの点がとても参考になりました。また、各章末には引用・参考文献
が数多く記載されているため、さらに詳しく知りたい読者は本書を起点に関連文献の情報
を得ることもできます。

これから超音波モータの研究開発を始める方には入門書として最適な本です。さらには、超
音波モータの研究事例や実用化例が豊富に紹介されているため、超音波モータに興味があ
る方にもおすすめの一冊です。

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