地中レーダ - 電磁波による地下計測技術 -

地中レーダ - 電磁波による地下計測技術 -

電波の物理的な性質,媒質と電波の相互作用,レーダ計測装置と信号特性を理解できる。

ジャンル
発行年月日
2024/03/21
判型
A5
ページ数
252ページ
ISBN
978-4-339-00989-7
地中レーダ - 電磁波による地下計測技術 -
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定価

4,290(本体3,900円+税)

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  • 内容紹介
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  • 広告掲載情報

【読者対象】
本書は東北大学大学院環境科学研究科においてリカレント講義として行ってきた内容に加え、物理探査学会・物理探査セミナー、IEEE International Geoscience and Remote Sensing Society(GRSS)でのチュートリアル・レクチャーなどでの講義ノートを基にしています。読者として電気・情報系の学部学生、工学・理学系大学院学生、また地中レーダを実際に利用する社会人を想定していますが、より広く電波工学に興味のある方や、応用分野に関係する方にもお勧めします。

【書籍の特徴】
地中レーダ(GPR)は、地下埋設物の検知、舗装道路の保全、遺跡調査、地質調査、地雷検知と幅広い分野で応用が進んでいる地下計測技術です。本書では電波工学について基礎的な説明は他に譲り、地中レーダに特有な技術を中心に解説しています。遺跡調査、土木・地質調査を目的とする読者には、やや難解な箇所があるかもしれませんが、電波工学の本質を捉える道筋を見つける手助けと思っていただきたいたいと願っています。

【各章について】
1章では、地中レーダ技術の概要をできるだけ平易に説明し、各章への導入としています。本章だけで、地中レーダの基本はすべて理解できると思います。
2章では、レーダの基本的な特性を説明した後、レーダ方式、アンテナ、地中レーダ計測に必要な測位方式などを説明します。
3章では、地中の物質と、その中を伝搬する電波の性質について説明します。これによって地中レーダの探知深度などが予測できます。
4章では、地中レーダに利用するアンテナの性質について述べます。
5章では、取得したレーダ・データの処理と画像化を説明します。
6章では、現場に適用した地中レーダの計測方法を紹介します。
7章では、電波利用の規則を定める電波法と地中レーダの関係を説明します。
8章では、埋設管、舗装道路、空港舗装体、樹木の根について具体的な計測事例を紹介します。
9章では、電波の偏波を利用した目標識別などへの応用を説明します。
10章では、高速・広域計測が可能なアレイ型地中レーダについて説明します。
11章では、地中レーダを用いた地雷検知について具体的事例を紹介します。

【著者からのメッセージ】
著者は、環境計測、遺跡探査、埋設物検知などの分野で地中レーダ技術の開発に携わってきました。わが国では社会インフラの保全管理の重要性が強く謳われるようになり、地中レーダは埋設物の監視を非開削で行う方法として注目を集めています。地中レーダはスイッチを入れてレーダ装置を動かすだけで、レーダ画像がディスプレイに表示され、誰でも簡単に使えます。しかし多くのユーザーは、思ったようにデータがとれない、期待した物体が検知できないなどの問題に直面します。これらを解決するには、電波の物理的な性質、媒質と電波の相互作用、レーダ計測装置と信号特性などの理解が唯一の方法です。本書はそうした電波工学的なアプローチを初学者にも理解していただきたいと思いながら執筆しました。

【キーワード】
地中レーダ GPR レーダ技術 地下計測 信号処理 電波散乱 アンテナ 埋設管 人道的地雷除去 遺跡調査

電波は「情報伝送」,「エネルギー伝送」,「計測」の3分野で利用されてきた。放送・通信など情報伝送が長年電波利用の要であったが,光通信の発達で,その役割を変えている。レーダ技術を中心とする電波の計測への応用は,ヘルツの検証実験から一貫して研究開発と実用化が進められてきた。電波・光が空間を波動伝搬する物理的な性質に基づくものであることから,移動体無線通信,無線電力伝送と並び,計測への利用は,他に置き換えることができない。

レーダ技術は,航空管制,気象観測などの大型システムから,自動車衝突防止レーダなど身近な利用が拡大している。こうした目的で小型かつ汎用性の高いハードウェアが利用できるようになり,人体検知など新しいレーダ技術の応用が広まっている。

一方,衛星搭載合成開口レーダ(SAR)は1990年代に実用化され,災害時の観測などに威力を発揮し,マスメディアでレーダ画像を見る機会も多い。電波反射の方向と伝搬時間から反射体の位置を特定するのがレーダ技術の基本である。この技術を拡張し,対象物を画像化するのがイメージングレーダであり,一般には衛星から地表面を画像化する技術をリモートセンシングと呼んでいる。しかし,地中レーダは人間が直接目で見ることができない埋設物を電波を利用して遠隔的(remote)に視る(sensing)という点で,真にリモートセンシング技術である。また,地中レーダは移動しながら対象を画像化するSAR技術を基本とする点で,衛星搭載SARとの技術的な点での共通性が高い。

著者は,環境計測,遺跡探査,埋設物検知などの分野で地中レーダ技術の開発に携わってきた。阪神・淡路大震災,東日本大震災を経て社会インフラの保全管理の重要性が強く謳うたわれるようになり,地中レーダは埋設物の監視を非開削で行う方法として注目を集めている。

地中レーダはスイッチを入れてレーダ装置を動かすだけで,レーダ画像がディスプレイに表示され,誰でも簡単に使える。その反面,地下媒質中を伝搬した電波で埋設物を計測することから電波の減衰とクラッタが障害となり,空中で数百m離れた物体の計測より,地下30cmの埋設管検知のほうが難しいという事態にしばしば遭遇する。こうした問題を解決するには,電波の物理的な性質,媒質と電波の相互作用,レーダ計測装置と信号特性などの理解が唯一の方法である。


本書は東北大学大学院環境科学研究科において,著者が社会人を含むリカレント講義として行ってきた内容に加え,物理探査学会・物理探査セミナー,またIEEE International Geoscience and Remote Sensing Society(GRSS)でのチュートリアル・レクチャーなどでの講義ノートを基にしている。読者として電気・情報系の学部学生,工学・理学系大学院学生,また地中レーダを実際に利用する社会人を想定している。電波工学についての基礎的な説明は他に譲り,地中レーダに特有な技術を中心に解説した。遺跡調査,土木・地質調査を目的とする読者には,やや難解な箇所があるかもしれないが,電波工学の本質を捉える道筋を見つける手助けと思っていただきたい。ソフトウェア,GUIなどの発達,さらにAIの導入などで,地中レーダのブラックボックス化が今後進んでいくと予想するが,読者に地中レーダ技術が電波科学を基礎とする計測技術であることを理解していただくのが本書の目的である。

2024年1月
佐藤源之

1.地中レーダ技術の概要
1.1 地中レーダの利用目的
1.2 歴史
1.3 計測の実際
1.4 地中レーダの原理
 1.4.1 地中電波伝搬
 1.4.2 電波の反射
1.5 岩石・地層の誘電率特性
1.6 地中レーダ装置
 1.6.1 レーダシステムの性能評価
 1.6.2 地中レーダシステム
 1.6.3 送信波形
 1.6.4 受信波形
 1.6.5 波形表示
1.7 計測手法
 1.7.1 アンテナ配置
 1.7.2 誘電率分布計測
1.8 データ処理技術
 1.8.1 地下構造とレーダ波形
 1.8.2 地中レーダ信号処理の特徴
 1.8.3 電磁界シミュレーション
1.9 まとめ

2.レーダシステム
2.1 レーダの基本特性
 2.1.1 レーダ方程式
 2.1.2 最大探査深度
 2.1.3 レンジ分解能
 2.1.4 地中レーダ信号波形モデル
 2.1.5 地中レーダにおけるレンジ分解能
 2.1.6 方位(アジマス)分解能
 2.1.7 周波数
2.2 レーダ方式
 2.2.1 インパルスレーダ
 2.2.2 連続波レーダ
 2.2.3 FM-CWレーダ
 2.2.4 ステップ周波数(SF-CW)レーダ
 2.2.5 その他のレーダ方式
2.3 アンテナ配置
 2.3.1 モノスタティック・レーダ
 2.3.2 バイスタティック・レーダ
 2.3.3 マルチスタティック・レーダ
 2.3.4 アレー型地中レーダ
2.4 ボアホールレーダ
2.5 測位技術
2.6 まとめ

3.媒質の性質
3.1 導電性媒質中の電波伝搬
 3.1.1 無損失媒質中での電波
 3.1.2 わずかに導電性をもつ媒質中の電波
 3.1.3 高導電率媒質中での電波
3.2 地下媒質の電気・磁気特性
3.3 地下媒質の電気的性質の計測手法
 3.3.1 平行平板法
 3.3.2 同軸プローブ法
 3.3.3 同軸管法
 3.3.4 TDR法
 3.3.5 地中レーダ計測を利用する方法
3.4 水の誘電特性
3.5 混合媒質
3.6 土壌水分と比誘電率
3.7 地下媒質の弾性波による計測
3.8 まとめ

4.アンテナと電波放射
4.1 地中レーダアンテナからの電波放射
 4.1.1 線状アンテナからの電波放射
 4.1.2 パルス励振されたアンテナからの過渡放射電磁界
 4.1.3 地中レーダの送信波形
 4.1.4 地中レーダ用アンテナに求められる特性
 4.1.5 アンテナ中心周波数と周波数帯域幅
4.2 地中レーダ用アンテナ
 4.2.1 基本的なアンテナ
 4.2.2 地中レーダに特化したアンテナ
 4.2.3 アンテナシールド
 4.2.4 バラン(平衡-不平衡回路)
4.3 媒質と地中レーダアンテナ
 4.3.1 媒質近傍に置かれたアンテナ
 4.3.2 アンテナの設置形態
4.4 まとめ

5.信号処理と表示
5.1 信号処理の目的
5.2 レーダ信号の情報と表示
5.3 1次元信号処理
 5.3.1 1次元波形モデル
 5.3.2 周波数フィルタリング
 5.3.3 パルス圧縮
5.4 2次元信号処理
 5.4.12 次元波形モデル
 5.4.2 2次元信号としての信号処理
 5.4.3 空間-時間周波数領域におけるフィルタリング
5.5 基本的な信号処理アルゴリズム
 5.5.1 平均値除去
 5.5.2 振幅処理
 5.5.3 移動平均
 5.5.4 NMO補正
5.6 速度解析
 5.6.1 透過波の利用
 5.6.2 点反射体の利用
 5.6.3 平板状反射体の利用
 5.6.4 ラテラル波の利用
5.7 埋設物の形状推定
 5.7.1 埋設物位置検知
 5.7.2 マイグレーションによるレーダイメージング
 5.7.3 レーダ対象物からの電波散乱モデル
 5.7.4 逆問題としてのマイグレーション
 5.7.5 時間領域でのレーダイメージング
 5.7.6 ディフラクションスタック
 5.7.7 f-kマイグレーション
 5.7.8 リバースタイム・マイグレーション
 5.7.9 3次元マイグレーション
 5.7.10 トモグラフィ
5.8 電磁界シミュレーション
 5.8.1 波線追跡法
 5.8.2 モーメント法
 5.8.3 FDTD法
5.9 まとめ

6.計測の設計
6.1 地表計測の設計
6.2 測線の設定と測位
6.3 ボアホールを利用した計測
6.4 まとめ

7.電波法
7.1 無線局としての地中レーダ
7.2 微弱無線局
7.3 地中レーダからの電波放射計測
7.4 まとめ

8.計測事例
8.1 埋設管
 8.1.1 埋設管計測の意義
 8.1.2 Bスキャン画像
 8.1.3 アンテナ位置制御と地中レーダプロファイル
8.2 舗装道路
8.3 空港舗装体
8.4 樹木の根
8.5 まとめ

9.偏波計測
9.1 偏波の利用
9.2 偏波基底変換
9.3 埋設管計測への利用
9.4 反射体識別への利用
9.5 まとめ

10.アレー型地中レーダ
10.1 アレー型地中レーダ「やくも」
10.2 計測例
10.3 津波被災者捜索活動
10.4 CMP計測
10.5 舗装面計測への利用
10.6 偏波計測可能なアレー型地中レーダ
10.7 まとめ

11.人道的地雷除去活動
11.1 人道的地雷除去活動とは
11.2 従来の地雷検知・除去技術
11.3 電磁界を利用した地雷検知センサ
11.4 デュアルセンサALISの開発
11.5 カンボジアでの評価実験
11.6 カンボジアでの実用化
11.7 ウクライナを含む地雷被災国での運用
11.8 まとめ

付録:レーダ断面積
引用・参考文献
あとがき
索引

佐藤 源之

佐藤 源之(サトウ モトユキ)

レーダを用いた環境計測技術の開発と応用を進めてきました。地中レーダ(GPR)は地下水など地下環境、埋設管検知、コンクリート内部や遺跡の調査に加え、地雷検知への利用も進んでいます。また地表設置型合成開口レーダ(GB-SAR)は地滑りや社会インフラ計測に利用できます。電波の反射・散乱現象を利用するレーダ技術を電波工学に基づき理解することにより、民生用のレーダ利用は今後急速に発展すると予想しています。

掲載日:2024/04/01

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掲載日:2024/03/14

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掲載日:2024/03/12

2024年 電子情報通信学会 総合大会プログラム

掲載日:2024/03/04

電子情報通信学会誌2024年3月号

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掲載日:2024/02/28

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