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Book Review

増渕基 ドイツ在住の橋梁エンジニア,博士(Dr.-Ing.)

本書のレビューの執筆依頼を頂いたのは2018年5月,ロシアでサッカーのワールドカップが始まろうかという時だった.南ドイツに住む私は,大会前最後の日本代表の試合が近所のインスブルックで行われると聞いて,応援しに行くことにした.
スタジアムまでの車を走らせながら,ふと,どうすればもっと日本の橋梁デザインが良くなるかを考えていた.
とある世界的なスターエンジニアという「個」が,長崎に美しい歩道橋を架けても,それだけで日本の橋梁デザイン全体が劇的に良くなるわけではない.
景観工学の発展とともに,「全体」の底上げは確かにされてきた.しかし,それで世界から注目を受ける美しい橋が日本に次々と生まれてきたかと言えば,そうとは言えない.
試合開始のホイッスルの音で,ハッと我に返り,目前のフィールドに目をやる.
二十年前から比べれば日本代表は本当に強くなった.聞くところによると,海外リーグでプレーする選手が大半を占めているそうである.高い情熱と志を持って,リスクを恐れず海外で挑戦する.これは「個」についての話.一方,大会直前での代表監督解任のニュースが話題になったが,つまるところこの騒動の争点は,継続的な哲学の欠如,ひいては将来的なビジョンの欠如うんぬんであったように思う.これは「全体」についての話.個と全体が絡み合いながら,日本代表はここまで強くなってきたのであろう.
ところで,「個」と「全体」の関係性と言う意味では,橋梁デザインでも同じことが言えるのではないか,と思い至ったのは,試合終了間際,香川選手がダメ押しのシュートを決めた時だった.
さて,前置きが長くなったが,本書である.
フランスやドイツで起こったコンクリートの黎明期から,スイスのマイヤールの挑戦,ドイツのアウトバーンに始まる橋梁景観設計の萌芽,と多岐に渡るテーマが取り上げられた前半.そして日本で著者の鈴木さんが設計されてきた橋梁デザインについて書かれた後半.
本書はこのように国と時間,人をまたぐ幅の広い論考が一冊にまとまった大変ユニークな本である.橋梁デザインの歴史あるいは教科書であり,著者の作品解説集でもある.章ごとに分かれていて,それらは短かくまとまっているので読みやすく,どこからでも読み始めることができる.
前半のこの一見,散文的とも言える多岐に渡る論考を,橋梁デザインにおける「個」と「全体」という点から整理してみよう.
「個」の事例としてスイスのエンジニア,ロベール・マイヤール(Robert Maillart,1872-1940)が取り上げられている.
高い情熱と志を持って,リスクを恐れずに挑戦し続けたエンジニアとして,マイヤール以上の人物はいない.サルギナトーベル橋,シュバントバッハ橋,テス橋,・・確かにマイヤールは人類史に残る傑作を残してきた.しかし,マイヤールの真骨頂は,エンジニアとしてのその生き方にある.彼は生涯に渡って,当時新材料であったコンクリートの,最もエレガントな構造形態を探求したのである.
前章のコンクリート黎明期の歴史は,このマイヤール考のプロローグとして書かれていると考えて良いだろう.本書で明らかになるのは,今まで光が当てられてこなかった面,当時の設計コードとマイヤールの橋との関係である.当時の権威に対しての,マイヤールの気骨稜稜の精神を明らかにするこの論考は,国際的な視点から見てもユニークで価値の高いものと言える.
一方,橋梁デザインの「全体」の事例として,ドイツのアウトバーンの歴史が取り上げられている.
よく知られているように,アウトバーンの建設はナチスの経済政策の一環であった.世界で初めての本格的な高速道路ネットワークであったことや,速度無制限の道路であることがよく知られているが,土木インフラとしては特に,その設計理念によって高い評価を受けている.
税金からなる公共事業は経済性や合理性が優先される.道路建設においては,ある二点を"最短距離で"結ぶのがセオリーであるが,アウトバーンは二点を"優雅に"結びつける,という理念のもとに設計された.「道路によってもまた,ドイツをより美しくしなくてはならぬ」というコンセプトのもと,設計システムが構築され,設計者の育成も行われた.
このシステムから生まれた一人が,20世紀の橋梁エンジニアの巨人フリッツ・レオンハルト (Fritz Leonhardt,1909-1999)である.構造エンジニアリングの技術的な発展に大きく貢献した一方で,橋梁美とでも呼べる設計哲学を発展させ啓発した.ここに,美の設計哲学が生まれたのである.
本書では,2000年代からマイク・シュライヒ(Mike Schlaich, 1960-)がベルリン工科大学で試みている教育についても紹介されている.この基盤には,レオンハルトから脈々と受け継がれてきた哲学とシステムがある.半世紀を経てもなお色褪せることのない,橋梁デザイン「全体」としての哲学の強さと継続性がここで明らかになろう.
以上のように「個」と「全体」と分けて考えれば,なぜ著者がこれら多岐に渡る論考を一冊の本にまとめたかが分かる.
橋をデザインするということは,ただのインフラにすぎない橋梁を,文化の中にインストールしようとする試みである.シュライヒらの言葉を借りれば,インフラは「文化の中で位置づけられることにより,はじめて技術的にも機能的にも完全なものとなる」のである.それには,「個」の資質と情熱に加え,「全体」として優れた哲学とシステムが必要である.技術だけではなく景観だけでもない.「個」と「全体」はまるで,縦糸と横糸のように絡み合い,橋梁文化を成熟させるのである.
まるで大学の教科書のような,飾り気のない装丁の本書は,そういった複雑だけれども本質的な視点から,橋梁デザインを論じている.橋梁デザインに興味のある方は,本書を読んで,深くて楽しい橋梁デザインの"実際"に触れてみてはいかがでしょうか.

増渕基 ドイツ在住の橋梁エンジニア,博士(Dr.-Ing.)
ホームページ: http://masubuchi.de/

(参考文献)
*ドイツ鉄道 (編集), ヨルク・シュライヒほか (著), 増渕 基 (訳) :鉄道橋のデザインガイド: ドイツ鉄道の美の設計哲学,鹿島出版会 (2013)

  橋梁デザインの実際
-その歴史から現代のデザインコンペまで -

鈴木圭 日大教授 博士(工学) 著

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発行年月日:
2018/05/11
判 型:B5
ページ :202頁
ISBN:
978-4-339-05257-2
定 価: 3,456円
(本体3,200円+税5%)

Book Review

読者モニターレビュー
【ふじわらともこ様(色彩、デザインディレクション、芸術教育(こども))】

 言葉から感性を抽出する技術は,人口知能やロボットとの共存が進むこれからの時代にとって重要性が増すばかり。
 「感性」を重視した製品がヒットし,医療現場でも「感性」は着目されつつあり,その主体である生活者の「感性」は捉えところがなく,数値化することは一般的には難しいとされているが,本書ではその「感性」を計測するオノマトペ(擬音語・擬態語の総称)による計測手法を中心に解説している期待の書である。
 オノマトペのような曖昧で直感的な言葉から「感性」を理解し,解析されることが「技術」の進化に寄与することにつながることは喜ばしいことではないだろうか。
[読後感想]
 感性は理性に較べ,下位概念におかれることが多いのですが,技術に応用できるという側面もあります。
 人工知能、ロボットと共存する時代に生きる私達にとって人間らしい「感性」を持つことが,人間に求められる時代もすぐそこに到来することを予告しているかのように私には感じられました。

  感性情報学
-オノマトペから人工知能まで -

坂本真樹 電通大教授 博士(学術) 著

… 著者ホームページです
発行年月日:
2018/07/25
判 型:A5
ページ :200頁
ISBN:
978-4-339-02886-7
定 価: 2,808円
(本体2,600円+税5%)

Book Review

読者モニターレビュー
【gyu-don様( ITエンジニア)】

 本書は,従来の量子回路モデルとは異なる,測定型量子計算モデルについて紹介しています。測定型量子計算モデルは計算力の観点から,同モデルが回路モデルと等価で,また,量子状態を作るフェーズと,観測と古典計算を繰り返すフェーズに明確に分けることができるため,これまでとは異なる視点を提供してくれるとされています。
 観測により,まだ観測していない量子ビットの状態を変えながら計算を実現していく過程は,数式を追えば理解はできるものの,不思議で興味深いです。また,量子計算は,一体何を考えながら組み立てればいいのか非常に難しいので,回路モデルとは違う視点で考えることは有用かもしれません。
 本書では,量子誤り訂正符号の一種で,非常に注目されている,トポロジカル誤り訂正符号についても詳しく述べられています。

 興味深いながらも,特に日本語の文献がほとんどない測定型量子計算について網羅的に書かれた,非常に内容の濃い本でした。
 参考文献のリストは各章ごとに丁寧にまとめられているため,深く理解するためにも,それらを読んでみようと思います。

  観測に基づく量子計算

小柴健史 埼玉大教授 博士(理学) 著

藤井啓祐 東大助教 博士(工学) 著

森前智行 群馬大助教 博士(学術) 著

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発行年月日:
2017/03/10
判 型:A5
ページ :196頁
ISBN:
978-4-339-02870-6
定 価: 3,024円
(本体2,800円+税5%)

Book Review

たいへんわかりやすく読みやすいのですが素人向けなので,同じ作者のもう一冊「ネコと分子遺伝学」も購入しようと思います
(Billiard Marker 様)

新コロナシリーズ 49

  ネコと遺伝学

仁川純一 九工大教授 理博 著

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発行年月日:
2003/08/22
判 型:B6
ページ :140頁
ISBN:
978-4-339-07699-8
定 価: 1,296円
(本体1,200円+税5%)

Book Review

早稲田大学人間科学学術院健康福祉科学科細胞制御学研究室 山越正汰(学部4年)、原太一(教授)

この「機能性食品学」では、機能性食品制度から始まり、栄養素に関することや具体的な疾病との関連性、今後の課題などについて触れられていた。近年巷では、盛んに機能性表示食品が持ち上げられており、今後は消費者であるわれわれが自ら、食品の安全性・機能性を吟味する力が問われることになる。本書では、機能性食品の科学的エビデンスを理解するための広範囲な知識が、分かりやすく説明されており、初学者の私にとって機能性食品学の入門書としてお勧めの一冊となった。具体的には、食品の機能性に関するメカニズムに加え、疾病の発症機序、生体調節機構など、食品科学から病態生理学までの幅広い知識を教授する内容となっており、食品がどのように生体に機能するのかを考える上で必要な、食品学と生体機能学の両方を一度に勉強したい方には是非ともお勧めです。

  機能性食品学

今井伸二郎 東京工科大教授 博士(医学) 著

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発行年月日:
2017/03/03
判 型:A5
ページ :206頁
ISBN:
978-4-339-06753-8
定 価: 2,808円
(本体2,600円+税5%)

Book Review

書評

 ゲーム情報学というのはゲームを対象とした(広い意味での)情報処理の研究領域である。「ゲーム情報学」という名称ができたのは1999年に情報処理学会で研究会を立ち上げたときなので、まだ20年程度しか経っていない若い領域である。人工知能のスタートはチェスの研究から始まりチェスを対象として数多くの貴重な成果が得られマッカーシーは「チェスは人工知能のハエ」と言った。ハエを対象とした研究で遺伝学が格段に進歩したように人工知能もチェスを対象とした研究で各段に進歩したということである。しかし日本ではゲームは遊びと見なされてゲームを対象とした研究が疎外される時期が長く続いた。日本は人工知能の研究で世界に出遅れたのだが、その理由の一つにゲーム研究の軽視があったのである。
 日本には将棋と囲碁(囲碁は中国発祥のゲームだが今のように発展したのは日本である)という貴重なゲームがあるので、それを対象とした研究をしない手はないということで遅ればせながらゲーム情報学という名称を冠した研究領域を立ち上げた(もっともらしい学問の名前をつけないと認められなかった)。それから20年でようやく体系化にこぎつけることができたのが本書である。伊藤氏が思考ゲームの認知科学的な側面を、保木氏が思考ゲームの情報科学的な側面を、そして三宅氏が最近日本でも盛んになってきたデジタルゲームへの応用を説明している。これまで日本でゲームを研究対象としたくても基本文献が存在しなかったのだが、これからは本書を推薦できる。ゲームの研究を進める上での基礎を本書でぜひ学んでほしい。たとえば意外と敷居が高いゲーム理論(たとえば「ナッシュ均衡」など)の基礎についても学ぶことができる。本書が出版されたことは今後のゲーム情報学の発展のためにとてもうれしいことである。ゲームのプログラムに興味をもったらぜひ最初にこの本を手に取ってほしい。
松原 仁(公立はこだて未来大学)

  ゲーム情報学概論
-ゲームを切り拓く人工知能 -

伊藤毅志 電通大助教 工博 編著

保木邦仁 電通大准教授 博士(理学) 著

三宅陽一郎 (株)スクウェア・エニックス 著

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発行年月日:
2018/05/18
判 型:A5
ページ :234頁
ISBN:
978-4-339-02885-0
定 価: 3,240円
(本体3,000円+税5%)

Book Review

読者モニターレビュー(ni様〔研究・開発職,専門:機械力学〕)

題目ままの本と言っていいと思います。
コラム的なパートで固有値解析や反復法に関する内容も多少は登場しますが,固有値とか固有ベクトルそのものについては解説されません。
本書一冊で応力解析の基礎的内容に関しては完結できる構成であり,その意志を感じます。

本書は3部構成です。
1部:応力解析・材料力学、数値計算の基礎的内容
2部:有限要素の定式化
3部:Octave(MATLAB)プログラムの実装

全体を通して数式の展開が非常に丁寧に記述されていますので,手を動かさずにざっと読んで流れを把握するぐらいの使い方もできます。
有限要素の定式化に関しても,種々の要素について仮想仕事の原理を基点として同じ流れで解説されますので,2節点要素に始まり,3次元要素まで順に読み進めていけると感じました。

プログラムの実装に関しては,スクリプトの内容が貼られているだけというわけではなく,各機能の解説もついていて,これなら自分でもできそうかなと感じさせてくれる内容です。
ただ,付録のスクリプトはMATLAB寄りではない書き方のため,MATLABではそのままでは動作しません。Octaveで動作確認後にMATLAB用に修正してみます。

初学者向けというわけでもなく,機械系出身で応力解析等の業務に従事する技術者が網羅的に理論のおさらいをし,ブラックボックスになりがちな有限要素法周辺の知識を拡充するのに役立つ書です。

参考文献は充実していません(それだけ個々の書の内容が充実しているということだと思います)ので,本書をきっかけとしてさらに深い内容へ入っていこうとする場合は,参考文献の参考文献まで掘り下げて目を通してみてもいいかもしれません。

  応力解析のための有限要素法理論とプログラム実装の基礎

長嶋利夫 上智大教授 博士(工学) 著

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発行年月日:
2018/05/10
判 型:A5
ページ :272頁
ISBN:
978-4-339-04656-4
定 価: 4,104円
(本体3,800円+税5%)

Book Review

組合せ最適化の学習を始めるために読み始めました。
説明は基本的に分かりやすく教科書に向いていると思います。
(冬季 様)

  メタヒューリスティクスとナチュラルコンピューティング

古川正志 北海道情報大教授 工博 著

川上敬 北海道工大教授 博士(工学) 著

渡辺美知子 北見工大准教授 博士(工学) 著

木下正博 北海道工大教授 博士(工学) 著

山本雅人 北大教授 博士(工学) 著

鈴木育男 北見工大准教授 博士(工学) 著

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発行年月日:
2012/01/06
判 型:A5
ページ :208頁
ISBN:
978-4-339-02461-6
定 価: 2,808円
(本体2,600円+税5%)

Book Review

書籍レビュー(@hiro5585様)

Qiitaに詳細を掲載しています。
https://qiita.com/hiro5585/items/01cc0062a101a4f198b1

この書籍は,大きく以下のような特徴があります。
1. Pythonを通じて画像処理・音声処理の基礎を習得できる
2. 画像処理・音声処理を題材としてPythonの数値計算の基礎を習得できる
3. 機械学習のためのハンドクラフト特徴の作り方の基礎を習得できる


内容としては,データ構造など基礎的なことから説明されてあり,そもそも信号がどう表現されていて,プログラム上でどのように扱われているかを最初に説明されていることがよかったです。そして,信号処理の定番であるフーリエ変換について,スペクトルが捉えるものがどういった現象かを,Matplotlibでの可視化結果を踏まえて説明しているのがよかったです。この部分なんとなく使っている人が多い気がするので,再確認する意味でも読むことをおすすめします。最後に応用例として,画像にける画素の分類であったり,音のあるフレームを抽出などが書かれています。

総評すると,信号処理の初学者が一人立ちして研究・開発を行うための入門書としては非常に優れていると思います。また,NumpyやMatplotlibなどの,データ分析では必須となっているライブラリの使い方を実践を伴い学べるのは非常に良いです。


  Pythonで学ぶ実践画像・音声処理入門

伊藤克亘 法政大教授 博士(工学) 著

花泉弘 法政大教授 工博 著

小泉悠馬 NTTメディアインテリジェンス研究所 博士(工学) 著

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発行年月日:
2018/04/27
判 型:A5
ページ :190頁
ISBN:
978-4-339-00902-6
定 価: 2,700円
(本体2,500円+税5%)

Book Review

安全管理について、なかなかラボワークに即したテキストがなく、これまで建設業などの他業種の例をテキストにしてきました。
安全への考え方は同じですが、このように研究室を題材としたテキストは適切な対策と、これまで得られなかった視点も与えてくれます。
また、コラムも大変おもしろく、安全推進のテキストでありながら、すいすい読んでしまう内容に驚きました。
このような図書は、大学や公的研究機関、企業研究所のいずれにも大変ニーズのあるものと思います。
是非、引き続き良書の出版をお願いいたします。
(八海醸造株式会社 研究開発室 室長 倉橋 敦 様)

  研究室では「ご安全に!」
-危険の把握,安全巡視とヒヤリハット -

片桐利真 東京工科大教授 理博 著

… 著者ホームページです
発行年月日:
2018/05/07
判 型:A5
ページ :224頁
ISBN:
978-4-339-07816-9
定 価: 3,024円
(本体2,800円+税5%)
1 - 10件目を表示 <前ページ 1234567次ページ