21世紀の太陽光発電 - テラワット・チャレンジ -

シリーズ 21世紀のエネルギー 12

21世紀の太陽光発電 - テラワット・チャレンジ -

太陽電池や太陽光発電システムなどの基礎から研究開発の現状,将来展望を平易に解説。特に太陽光発電技術について学びたい方を対象。

ジャンル
発行年月日
2017/12/20
判型
A5
ページ数
200ページ
ISBN
978-4-339-06832-0
21世紀の太陽光発電 - テラワット・チャレンジ -
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定価

2,750(本体2,500円+税)

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再生可能エネルギー,特に太陽光発電技術について広く学びたい方を対象に,太陽電池や太陽光発電システムなどの基礎から研究開発の現状,将来展望までをわかりやすく解説。エネルギー,化学系の大学学部や大学院の教科書にも最適。

21世紀を生きるわれわれにとって,解決すべき最大の課題は地球温暖化問題といわれて久しい。2014年12月に報告されたIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change, 気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告にもあるように,この間の地球の平均気温は年々上昇の一途をたどり,とどまる気配を見せていない。また,われわれが使用し続ける石油,天然ガス,石炭などの化石燃料エネルギーから排出される炭酸ガス(CO2)が地球温暖化の主要因であることも確実になってきている。さらに,地球温暖化が原因と推定されるような竜巻,集中豪雨,酷暑などの異常気象が,日本でも観察されるようになってきた。世界各国が協力して,早急に効率的な温暖化対策に着手しなければならない時期に来ている。

幸い,2015年12月にパリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(21th Conference of the Parties, COP21)において,「今世紀後半には人為的な活動によるCO2の排出量をゼロにする」という目標を掲げた取決め,いわゆるパリ協定が12月12日に採択された。パリ協定の画期的なところは,気候変動枠組条約に加盟する196ヵ国すべてが参加する多国間国際的協定である。そして,2020年以降の温暖化対策として世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃以下(できれば1 . 5℃以下)に抑えることを目的としている。パリ協定の発効には55ヵ国以上が批准し,世界のCO2などの温暖化ガス総排出量の55%に達する必要があるとされていたが,その後2016年10月5日の時点でアメリカ,中国,ロシアなど72ヵ国が批准し,その温暖化ガス排出量が56.75%となり,国数と排出量のいずれの条件も満たし,2016年11月4日に発効した。

しかしその後,アメリカのトランプ新大統領がパリ協定離脱を表明した。正式離脱には4年程度の年月が必要であり,離脱は次期アメリカ大統領選挙後の2020年11月になると見られているが,世界各国の懸念事項となっている。

パリ協定では目標達成のため,各国はそれぞれのCO2の削減量の目標を提示し,それについて実行努力をすることになる。しかし,いかにしてCO2排出量を減らすかの具体策は,各国に委ねられている。なによりも化石燃料に代わりCO2を排出しない再生可能エネルギーを利用する以外に手はない。

再生可能エネルギーの中でも,太陽光や風力は水力に比べ,いままでそれほど使用されてこなかった。しかし,地球温暖化問題が人類にとって最大の課題となったいま,化石エネルギーから再生可能エネルギーへのシフトは21世紀における必須事項となっている。それゆえ,ヨーロッパを中心とした先進諸国では,再生可能エネルギーの積極的な導入が図られ,2030~2040年頃には1次エネルギーの約20%を再生可能エネルギーで賄う計画を立て,実行している国が多い。数多くある再生可能エネルギーの中では太陽光発電が,使いやすさ,維持や保全の簡便さ,環境負荷の少なさから最も有望視されている。

日本は,エネルギー自給率がわずか6%と,欧米先進国に比べ極端な化石エネルギー資源小国である。現在,電力の約90%は化石エネルギーで賄われ,地球温暖化対策と逆行するような状況となっているが,日本政府も再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組んでいる。太陽光発電については,積極的導入施策により,大幅な導入が進んでいるが,その急速な導入によって課題も見えてくるようになってきた。

本書は日本エネルギー学会編,「シリーズ21世紀のエネルギー」を構成する1冊として企画された。再生可能エネルギー,特に太陽光発電技術について広く学習したい読者を対象として,太陽電池や太陽光発電システムなどの基礎から研究開発の現状,将来展望まで,わかりやすく解説したつもりである。エネルギー,資源,化学系の大学学部や大学院の教科書や参考書としても使用できると考えている。ご活用いただければ幸いである。

本書の発刊にあたり,日本エネルギー学会・出版委員会ならびにコロナ社に感謝の意を表する。

2017年9月 荒川 裕則

1. 無尽蔵の太陽エネルギー
1.1 太陽の構造
1.2 太陽のエネルギー
1.3 地球が受ける太陽エネルギーの大きさ
1.4 太陽光スペクトルの分布
1.5 地球が受ける太陽エネルギーのゆくえ
1.6 人類の太陽エネルギーの利用
1.7 人類の発展と地球温暖化
1.8 再生可能エネルギーの使用
1.9 一次エネルギーと二次エネルギー,新エネルギー
1.10 世界の再生可能エネルギーの使用状況
1.11 再生可能エネルギーの賦存量
1.12 太陽光発電の可能性─テラワット・チャレンジ─
1.13 ドイツの“エネルギー転換”政策
1.14 シェル社の“ニュー・レンズ・シナリオ”

2. 太陽電池の基礎
2.1 太陽電池とは
2.2 太陽電池開発の歴史
 2.2.1 光起電力効果の発見
 2.2.2 pn接合型Si太陽電池の開発
 2.2.3 その他のpn接合型太陽電池の開発
2.3 太陽電池の発電原理
 2.3.1 半導体の特性
 2.3.2 半導体のドーピング
 2.3.3 半導体の励起─直接遷移と間接遷移─
 2.3.4 光伝導効果と光起電力効果
 2.3.5 太陽電池の作動原理
 2.3.6 太陽電池の構造
 2.3.7 ホモ接合とヘテロ接合
 2.3.8 太陽電池の効率
 2.3.9 太陽電池の解放電圧(Voc)の大きさに影響する因子
 2.3.10 太陽電池の短絡電流(Jsc)の大きさに影響する因子
 2.3.11 太陽電池の曲線因子(FF)の大きさに影響する因子
 2.3.12 太陽電池の最大変換効率(理論限界変換効率)はどれくらい?
 2.3.13 太陽電池の性能向上のための要素
 2.3.14 多接合型太陽電池

3. 実用化されている太陽電池
3.1 太陽電池の種類とその生産量
3.2 Si系太陽電池
 3.2.1 単結晶Si太陽電池
 3.2.2 多結晶Si太陽電池
 3.2.3 薄膜Si太陽電池
 3.2.4 ヘテロ接合太陽電池
 3.2.5 球状Si太陽電池
3.3 化合物半導体太陽電池
 3.3.1 CdTe太陽電池(略称:カドテル太陽電池)
 3.3.2 CIGS太陽電池
 3.3.3 III-V族太陽電池
3.4 フレキシブル太陽電池

4. これからの太陽電池
4.1 太陽電池の課題
 4.1.1 太陽光発電の普及
 4.1.2 発電コスト
 4.1.3 発電コスト低減のための研究開発
 4.1.4 太陽電池セルの最高性能
4.2 新しい太陽電池
 4.2.1 有機薄膜太陽電池
 4.2.2 色素増感太陽電池
 4.2.3 ペロブスカイト太陽電池
 4.2.4 CZTS太陽電池
 4.2.5 量子ドット太陽電池
 4.2.6 その他の太陽電池

5. 太陽光発電システム
5.1 太陽光発電システム
 5.1.1 独立型太陽光発電システム
 5.1.2 住宅用太陽光発電システム
 5.1.3 大規模太陽光発電システム
5.2 太陽光発電システムの商用化
 5.2.1 日本における太陽光発電システムの商用化の歴史
 5.2.2 日本における太陽光発電システムの導入実績と今後の予想
 5.2.3 固定価格買取制度
 5.2.4 改正FIT法の施行
 5.2.5 各国における太陽光発電システムの導入実績
5.3 太陽光発電システムのこれからの課題

6. 21世紀の太陽光発電の計画と構想
6.1 世界の太陽光発電導入計画
6.2 建物の壁面や窓面への太陽光発電システムの設置─BIPVとZEB─
6.3 太陽光発電の効率的利用─スマートグリッドとスマートシティ─
6.4 世界を繋ぐ太陽光発電システム─GENESIS計画─
6.5 アジアの広域連係網─アジアスーパーグリッド構想─
6.6 デザーテック構想とサハラソーラーブリーダー計画
6.7 宇宙太陽光発電システム

引用・参考文献
おわりに

荒川 裕則(アラカワ ヒロノリ)