ナノバイオとナノメディシン - 医療応用のための材料と分子生物学 -

ナノバイオとナノメディシン - 医療応用のための材料と分子生物学 -

生命物質(ナノ)⇔細胞(バイオ)の双方向性に視点をおいて,医学と理工学分野の先端技術の歩み寄り・融合分野の開拓について解説。

ジャンル
発行年月日
2015/10/02
判型
A5
ページ数
320ページ
ISBN
978-4-339-06749-1
ナノバイオとナノメディシン - 医療応用のための材料と分子生物学 -
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生命物質(ナノ)⇔細胞(バイオ)の双方向性に視点をおいて,臨床的に役立つ医学と理工学分野の先端技術の歩み寄り・融合分野の開拓について解説する。ナノバイオとナノメディシンに関する,ユニークな専門書である。

この本を手にとった読者で,ナノテクノロジーを知らない人はいないだろう。しかし,ナノメディシンはなじみがないかもしれない。ナノテクノロジーとバイオテクノロジーを融合させた技術が,ナノバイオテクノロジーである。

副題の“医療応用のための材料と分子生物学”を見ると,人工物である材料と分子生物学とがどこで関連しているのか不思議に思うかもしれない。本書は,バイオマテリアルをナノメートルのスケール(10億分の1m)でとらえ,その極小空間における,材料と細胞との反応を材料と細胞との両側面から考え,実際の医療技術を理解できるようになることを目標とした。

生命体が生体物質と細胞との基本要素からできていることは周知の事実である。生体物質は細胞によって分泌されるが,その物質は逆に細胞に影響を与えつつ生命体を維持している。このような生命維持に対する双方向的な考え方を基に,新しい融合分野を読者自身でも考えてほしい。無機材料と有機材料を中心にした材料工学,分子生物学,医学を専門とする先生方と協力して,学際的分野のナノバイオとナノメディシンを取り上げて教科書をつくることができた。医療の未来をつくるためには,分野の異なる多くの研究者が協力して,別な視点から同じ技術を語り,一緒に考えることが大切である。

最近は,専門分野が異なると,研究内容を話しても,たがいによく理解できないことがある。例えば,材料を専門とする研究者は,生物学には関心を示さない。しかし,学問を志すと決めたならば,知らない領域をつくらず,広く知識を得ることが肝要ではなかろうか。分野の異なる研究者との意見を交わすことから,新しいアイディアが生まれ,それが技術革新につながることもあるだろう。このことは,医療分野に限ることではない。本書を通じて,新しい発想が生まれる一助となれば幸いである。

本書は,工学・理学・生物分野の研究を日夜行っている学部学生,大学院生だけでなく,幅広く医療に携わっている読者を想定して書かれている。そのため,生体に関連する物質から始まり,実際の材料を取り上げ,さらに医療機器に関して実例を挙げながら記載している。そのため,高校の生物や大学の一般教養における化学の知識があれば,本書を片手に勉強することで,学際的なナノバイオとナノメディシンの理解を深められると期待している。

なお,本書を出版するにあたり株式会社コロナ社の皆様には並々ならぬご助言・忍耐をいただいたことを,ここに深く感謝申し上げます。

2015年8月
生駒 俊之

─Part I【物質編】─
1. 生体物質とナノテクノロジー
1.1 はじめに
1.2 生体内物質
1.2.1 細胞外マトリックス
1.2.2 細胞増殖因子
1.2.3 サイトカイン
1.2.4 抗体
1.2.5 生体内の元素
1.3 細胞の機能
1.3.1 小器官とエネルギー通貨
1.3.2 形態維持
1.3.3 細胞膜の成分
1.3.4 膜の役割
1.3.5 細胞受容体
1.3.6 ECMと細胞との接着
1.4 細胞の物質輸送
1.4.1 薬物と生体膜透過機構
1.4.2 受動輸送
1.4.3 能動輸送
1.4.4 膜動輸送
1.5 ナノメディシン
1.5.1 ナノ粒子による薬物送達システム
1.5.2 古典的核生成論
1.5.3 単一分散シリカナノ粒子の生成機構
1.5.4 メソポーラスシリカナノ粒子
1.6 シリカナノ粒子の生体安全性と医療
1.6.1 細胞との相互作用
1.6.2 体内動態
1.6.3 医療応用
1.7 おわりに
引用・参考文献

2. ペプチドのナノバイオニクス
2.1 はじめに
2.2 高分子結合性ペプチド
2.2.1 ペプチドの標的としての合成高分子
2.2.2 ペプチドによる高分子の立体規則性認識
2.2.3 ペプチドによるさまざまな高分子認識
2.2.4 高分子結合性ペプチドの応用
2.3 自己組織化ペプチドナノマテリアル
2.3.1 bシートペプチドを用いたナノファイバの設計
2.3.2 ナノファイバの構築および機能化のためのペプチドの設計
2.3.3 特異的に接合するペプチドを利用した機能化
2.4 おわりに
引用・参考文献

3. 細胞を支えるコラーゲン化学
3.1 はじめに
3.2 コラーゲンの構造・特性
3.2.1 一次構造,二次構造,三次構造
3.2.2 生合成と分解代謝
3.2.3 コラーゲンの繊維形成
3.3 コラーゲンの抽出
3.3.1 可溶性コラーゲン
3.3.2 可溶化コラーゲン
3.4 コラーゲンの物性
3.4.1 粘土
3.4.2 旋光度
3.4.3 線維再生
3.4.4 コラーゲン分子鎖の組成
3.4.5 コラーゲンの熱変性
3.5 コラーゲン素材の分類と特徴
3.5.1 トロポコラーゲンとアテロコラーゲン
3.5.2 化学的修飾
3.5.3 物理的修飾
3.5.4 成形性
3.6 原料種
3.7 応用例
3.7.1 食品分野への応用
3.7.2 培養用機材への応用
3.7.3 化粧品原料としての応用
3.7.4 医療分野での応用
3.8 おわりに
引用・参考文献

4. 生体組織を再生するナノバイオニクス
4.1 はじめに
4.2 ウロココラーゲン―生体組織の階層構造
4.2.1 ウロコと生体組織の類似性
4.2.2 ウロコの再生機構
4.2.3 生物進化と材料
4.2.4 骨の構造と形成機構
4.2.5 コラーゲンの層板構造と変性温度
4.2.6 コラーゲンの安定性―翻訳後修飾
4.2.7 ウロココラーゲンの機能性
4.3 骨組織をつくる―再生医療の始まり
4.3.1 多孔質人工骨
4.3.2 一軸連通気孔をもった人工骨
4.4 骨組織を再生するナノバイオ技術
4.4.1 骨誘導再生法
4.4.2 有機・無機複合膜
4.5 神経を再生するナノバイオ技術
4.5.1 神経再生の考え方
4.5.2 神経再生のための材料と移植
4.6 軟骨を再生するナノバイオ技術
4.6.1 軟骨の特徴
4.6.2 軟骨組織の培養と移植
4.6.3 ナノ結晶を用いた再生軟骨の観測技術
4.7 靱帯を再生するナノバイオ技術
4.7.1 靱帯再建術
4.7.2 靱帯と骨組織の接合
4.8 おわりに
引用・参考文献

─Part II【発展編】─
5. 生体材料・ナノ材料に対する細胞の遺伝子応答
5.1 はじめに
5.2 DNAマイクロアレイを理解するための分子生物学
5.2.1 ゲノム,DNA,および遺伝子
5.2.2 遺伝子の発現
5.2.3 細胞の分化と遺伝子の発現
5.2.4 細胞機能と遺伝子発現
5.3 DNAマイクロアレイ―網羅的遺伝子発現解析の原理
5.4 DNAマイクロアレイ解析の生体材料評価およびナノ材料評価への応用
5.4.1 2種類の材料間における遺伝子発現の比較
5.4.2 多種類の材料間における遺伝子発現の比較
5.4.3 遺伝子発現パターンの類似性による材料のクラスター化
5.5 マーカー遺伝子の同定
5.5.1 骨芽細胞の分化マーカーの同定
5.5.2 金属酸化物ナノ粒子および金属ナノ粒子の毒性マーカー
5.6 おわりに
引用・参考文献

6. 整形外科で使われる生体材料
6.1 はじめに
6.2 骨折
6.2.1 骨折の治療
6.2.2 骨折手術に用いられる生体材料
6.3 脊椎疾患
6.3.1 脊椎疾患と治療
6.3.2 脊椎固定術に使用されるバイオマテリアル
6.4 関節疾患
6.4.1 関節疾患と治療
6.4.2 人工関節
6.5 骨移植
6.5.1 骨移植とは
6.5.2 人工骨
6.6 再生医療
6.6.1 骨の再生医療
6.6.2 軟骨・半月板の再生医療
6.6.3 脊髄の再生医療
6.7 おわりに
引用・参考文献
付録
索引

田中 順三(タナカ ジュンゾウ)

伊藤 博(イトウ ヒロシ)

芹澤 武(セリザワ タケシ)

早乙女 進一(ソウトメ シンイチ)

吉岡 朋彦(ヨシオカ トモヒコ)

澤田 敏樹(サワダ トシキ)

多賀谷 基博(タガヤ モトヒロ)