教科書では教えない機械設計製図

教科書では教えない機械設計製図

機械設計実務では「こんなときはどうするんだろう?」という教科書には載っていないような疑問にたびたび遭遇します。そんな疑問に,先人たちがどんな回答を出してきたのか,実務と教育に経験豊富な著者がやさしく丁寧に解説します。

ジャンル
発行年月日
2011/08/18
判型
A5
ページ数
144ページ
ISBN
978-4-339-04615-1
教科書では教えない機械設計製図
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定価

2,200(本体2,000円+税)

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機械設計実務では「こんなときはどうするんだろう?」という教科書には載っていないような疑問にたびたび遭遇します。そんな疑問に,先人たちがどんな回答を出してきたのか,実務と教育に経験豊富な著者がやさしく丁寧に解説します。

第1章 プロの設計手法 編
1.軸-穴のハメアイでスキマ0.001mmを実現したい
(確実にしかも安価で微小スキマを実現するためには)
2.製品組み立て時に発生する累積公差の扱い方
(今,注目の公差解析の入り口。設計1年生は必読)
▼例題1 公差解析1
▼例題2 公差解析2
3.設計の始まり:計画図(構想図)の描き方
(設計現場での計画図を通して,描き方を紹介)
3-1 計画図とは
3-2 単品部品の計画図の描き方
3-3 製品全体の計画図の描き方
3-4 部品計画のためのバックグラウンド図の作成方法
3-5 計画図から出図まで
4.製品全体の寸法公差は「リミット表」で管理しよう。
(製品全体の品質管理方法,全体を見渡す方法)
5.寸法記入が満足にできれば"設計者"
(具体的な部品で寸法記入手順を考える)
5-1 寸法記入の考え方
5-2 寸法記入手順
▼例題3 普通公差
▼例題4 寸法記入1
▼例題5 寸法記入2
6.はっきりしろよ! 安全率
(どの教科書を見てもはっきりした答えが出ないのはなぜか)

第2章 機械製図法の表現 編
1.図面は閉じた形状で描く。
(図面を引き締めて見せる小ワザ)
2.データム,切断線,部分拡大図,矢視図......すべて記号はAから?
(図面全体で,使用する記号は考えなければならない)
3.0.05mm除去する追加工は,どう描くの?
(意外に多い追加工指示の図面,相手に意思をうまく伝える)
4.図面の中の"あいまい"は悪いこと?
(正確さを知った上で"あいまい"を使いこなす)
5.加工刃物などは積極的に記入します。
(加工者は設計者の力量を見ている)
6.めねじのメントリ忘れずに。
(自分の図面でモノを製作したことのある人とない人の違いが出る)
7.表面粗さの加工方法の指示は必要なの?
(ついつい忘れがち。だけどとても大切)
8.JISの年次変更はすべて反映が必要なの?
(毎年送られてくる変更書類はどう扱えばいいのか)
9.なぜドリル穴には表面性状を記入しないの?
(JIS製図にはいくつもの特例がある。これもその一つ)

第3章 機械設計の心構え 編
1.機械設計者の鉄則!「困ったときはモノに聞け」
(設計者が壁や問題を乗り越えなければならないときに)
2.製品は美しくなければならない。
(この仕事に対して,取り組む姿勢として身につけたいもの)
3.機械設計の第一歩はまねることである。
(機械設計者は芸術家とある意味で共通点を持っている)
4.機械加工を知ること ~加工基準と設計基準の図面~
(機械図面のほとんどは加工に関する指示...ならば責任を持って加工の勉強をしなければ)
4-1 図面は加工者の視線で描こう
4-2 加工機械を適切に選定するようにしよう
4-3 寸法は「加工基準」と「設計基準」を使い分けよう
5.機械設計力を支えるもの
(土台の下の基礎部分にあたるもの)
5-1 材料学・力学(材料力学,水力学,工業力学など)
5-2 ITツール(CAD,CAEなど)
5-3 設計の要素(継手,軸受,締結など)
5-4 生産技術(加工学,生産工学,統計力学など)
6.金属の表面粗さ,ハメアイスキマを手で測定できますか?
(それくらい機械設計者にとって大切なこと)
7.「品質が高い」=「良いこと」なの?
(学校教育では言えない「適当に作れ!」は社会の常識)
8.「他人の図面はウソの図面」ってどういう意味?
(ウソをつくのは図面だけではないが...ぜひ知っておきたい)

第4章 機械設計者のワザ 編
1.世の中,「限界設計」だらけ?
(限界設計は非常ではなく日常として業務に取り組む)
▼例題6 設計変更1
▼例題7 設計変更2
2.機械製図の難関「幾何公差」について
(JIS製図解説者泣かせの幾何公差,一度は理解しておきたい)
2-1 幾何公差の力関係
2-2 公差域で考えよう
2-3 複数のデータムを使いこなそう
3.機械設計者の必需品:「シール(密封)」,「潤滑」,「耐熱・耐振動」をマスターしよう。
3-1 シール(密封)
    -非接触型シールは漏れる? 漏れない?
3-2 潤 滑
    -なぜ,すべり軸受は金属-金属の摺動回転ができるのか?
3-3 耐熱・耐振動
    -エンジンのフライホイールのボルト破断が止まらない
4.機械部品カタログの使い方
(機械製品のカタログは衣料品カタログとはひと味もふた味も違う)
5.50±0.3と50.3( 0 -0.6)で加工者心理の違い
(製品の出来上がり寸法の分布をコントロールする)
6.カギの材質はなに?
(材料特性を知ることが設計の幅を広げる)
7.ティアダウンとは?
(涙を流すくらいに一生懸命に働くこと?)
8.設計上は不要。でも加工上は必要
(図面に描かれた製品を具現化するために必要な指示)
9.便利で安価なIT公差
(なぜIT公差に示される数値は中途半端に細かいのか)
10.「肉盗み」って,新しいお酒の名前?
(ユニークな呼び名以上に重要なアイテム)
おわりに
索 引

機械設計のマメ知識
 機械設計に関するいくつかの質問を準備しましたので一緒に考えてみてください。日常生活の中で当たり前に思っていること,ふつうに使われていることでも意外にその理由はわからないものです。それらの理由・原因がわかれば,必ず応用が利き考え方に幅が出るものです。一つずつ謎を解明すれば機械設計の(隠れた?)基礎力が身につくと信じています。もちろん,すでに答えをご存知の方は読み飛ばしていただければけっこうかと思います。


(その1) 切り欠きには応力が集中する?
(その2) 乗用車とトラックはどちらの設計が厳しい?
(その3) 金属材料の疲労限度を10分で予測するってホント?
(その4) 乗用車デザインの売れるVS売れない
(その5) この字,読めますか?
(その6) 転がり軸受の玉はどうやって入れるの?
(その7) パイプが破裂! これ,どこが設計ミス?
(その8) 大きいもののほうが強度は低い?
(その9) 「出図」とはどこからどこへ図面を出すこと?
(その10) なぜ鉄に炭素を入れると硬くなるの?
(その11)エンジンの30万km保証ってどうやるの?

教師にぜひ読んでほしい教科書 (熊本県立技術短期大学校 川嵜義則 先生)

私はこれまで、専門の制御工学のほか、機械製図、機械実習、機械要素設計、機構学などを担当してきました。機械設計を専門にやってきた人間ではありませんが、思いつくことを述べます。

「学生の時勉強したことは、全く役に立たない」などと話される卒業生が少なからずおられます。これは本意を外すと大変なことであり、要は、「学校で学んだことはその殆どが基礎であり、世の中に出たらそれがそのまま使えることほとんどない」という意味でしょう。もっともその基礎もあまりしっかり学んでいるともいえません。
ところが、教科書を外れて教員が熱く語られた事項は、なぜか記憶に長く残っているのも事実です。特に設計製図については、学生にJIS規格を学ばせることが主体になり勝ちです。

本著は、そのようななかで、常に「なぜでしょう?」、「こんなときどうしますか?」と問いかけ、わかりやすく丁寧に答えています。交通法令を教えながら実際に運転できるまで育てる自動車教習所での効果的な教育と通じるところがあります。このような場所では、なぜ一旦停車?、なぜ徐行?を、そして、君ならどうのように運転しますか?を考えさせるのです。
この教育法の延長には、豊かな創意工夫が生まれてくることでしょう。そのようなことを考えさせくれる本書でした。
教師にぜひ読んでほしい教科書かもしれません。

このようなすばらしい本を書いていただいたことにお礼を申し上げたい(大学関係者)

私は企業の研究所から大学に転職し、製図を教えることになり途方に暮れておりました。 前職では製図とは離れた仕事をしていたものですから、にわか勉強でいくつかの 教科書に目を通してみたのですが、どれもピンときませんでした。 そのようなとき、「教科書では教えない機械設計製図」を見つけ、読んでみて大変参考になりました。実際に現場で使われていることを知ることで、学生への指導が変わってくると思います。

北條 恵司(ホウジョウ ケイジ)

「機械設計 2011 Vol.55 No.10」 掲載日:2011/10/10


日刊工業新聞2011年9月29日 技術科学図書欄 掲載日:2011/10/05

日刊工業新聞2011年9月29日付「技術科学図書欄」に新刊情報が掲載されました。
[東京都立産業技術高等専門学校、朝比奈 奎一先生による書評]
機械の設計や製図に関する書籍は多く出版されているが、そのほとんどが機械要素設計やJISに基づく製図規則を解説したものである。本書はサブタイトルに「教科書では教えない」とあるように、現場の設計の泥臭さを著者の経験をもとにやさしく解説した従来にない手引書である。

図面が何のためにあるかといえば、最終的に部品加工をし、製品を組み上げるためにあるのである。この観点に立って、例えば寸法公差や加工方法を決定する方法など、実際の設計では不可欠な要点を簡潔に述べている。卒業近い学生諸君や若い設計者には必読の書であると思う。

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