むだ時間・分布定数系の制御

システム制御工学シリーズ 16

むだ時間・分布定数系の制御

制御対象のもつむだ時間,空間的に分布する制御量の振舞いなど制御性能を劣化させる恐れのある現象に注目し,入力むだ時間系を中心にスミス法,状態予測制御,熱系,振動系について例題・実験結果を交え効率よく学習できるよう解説。

ジャンル
発行年月日
2007/03/08
判型
A5
ページ数
204ページ
ISBN
978-4-339-03316-8
むだ時間・分布定数系の制御
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定価

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  • 計測自動制御学会賞著述賞を受賞いたしました。
  • 内容紹介
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  • 目次
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  • 広告掲載情報

制御対象のもつむだ時間,空間的に分布する制御量の振舞いなど制御性能を劣化させる恐れのある現象に注目し,入力むだ時間系を中心にスミス法,状態予測制御,熱系,振動系について例題・実験結果を交え効率よく学習できるよう解説。

制御工学は1970年代から著しい発展を遂げ,古典制御論,現代制御論と呼ばれる理論体系を基礎に新しい展開を見せはじめている。中でも,集中定数系の理論はきわめて高度な発展を遂げ,制御対象の不確かさと性能の関係を解明するなどシステム理論の核心に迫る重要な成果が明らかにされつつある。しかしながら一方では,信号・情報の遅延を考慮しなければならないシステム(むだ時間系),ダイナミクスを支配するパラメータが空間的に分布したシステム(熱系,振動系などの分布定数系)の制御問題に直面したとき,指針は必ずしも明らかでなく,古典制御の教科書にさかのぼりながら実践的な解決法を探る事例が多く見受けられる。

本書は,「システム制御工学シリーズ」の一連の教科書の中で,特にむだ時間系,分布定数系のシステム理論と制御における基本的な結果を,工学部3,4年生の知識を前提に解説したものである。そして,1) これらの分野の常識と有用な成果を無理なく学べること,2) 近年発展を遂げた強力な設計法の中で,現代制御までの知識で学べるものをわかりやすく解説すること,に留意して執筆した。これらの試みが,制御工学の学修を続ける学生の一助となり,また産業界で活躍される技術者の参考となり,新しい制御法が定着するきっかけとなれば望外の喜びである。

各章の内容紹介

本書は,むだ時閥系(1,2,3章),分布定数系(4,5,6章)の部分からなり,これらは独立に読み進めることも可能である。

むだ時間系(1,2,3章)
1章 一般的なむだ時間系について押さえておきたい基本的な性質がまとめられている。むだ時間要素の性質と近似法,フィードバック制御に与える影響,安定性の解析法が述べられている。

2章 入力むだ時間系に対する制御法のうち,古典制御に基礎を置く代表的な制御法(PID制御,スミス法,IMC制御,ほか)がまとめられている。これらの手法は,制御現場で広く用いられているものが含まれている。

3章 状態予測制御の考え方に基づき,最適レギュレータ,オブザーバの構成,サーボ問題など,現代制御の重要な成果を入力むだ時閥系に適用する方法が述べられている。また後半では,むだ時間系のH^∞制御,ロバスト制御法が,状態予測制御の考え方に沿って述べられている。

分布定数系(4,5,6章)
4章 一般の分布定数系の分類と基本的な性質が,制御を考える側面からまとめられている。輸送型分布系(熱拡散系),振動系から選ばれた例題を用いながら,基本的な性質が紹介されている。4.3節には,分布系に共通する近似法が述べられている。

5章 輸送型分布系の中から,特に熱交換器(単管,向流型)を採り上げ,制御系の性質,システムの近似法,制御則の設計法が述べられている。これらは,4章の一般論の具体的な応用例(事例)として位置づけられる。

6章 振動系の中から,柔軟ビーム(オイラー・ベルヌーイ梁)の制御問題を採り上げ,制御対象のモデル化,システムのモード解析と近似,制御系設計で留意すべき点(スピルオーバ現象)が述べられている。

最後に,著者をむだ時間系・分布定数系の制御研究に導いて下さった示村悦二郎先生(早稲田大学名誉教授),内田健康先生(早稲田大学),ならびに本稿の執筆に有益な助言を下さった藤田政之先生(東京工業大学),コロナ社諸氏に深く謝意を表する。

2007年1月
阿部直人
児島晃

1.むだ時間系とは
1.1 むだ時間とは
1.2 むだ時間要素の近似
1.3 むだ時間系
 1.3.1 入力むだ時間系
 1.3.2 遅れ型むだ時間系
 1.3.3 中立型むだ時間系
1.4 むだ時間系の安定性
 1.4.1 ポントリヤーギンの判別法
 1.4.2 むだ時間に依存しない安定判別
 1.4.3 リアプノフの安定論
 1.4.4 ナイキスト安定判別法
 1.4.5 安定と不安定のスイッチング
1.5 むだ時間系の同定
演習問題

2.むだ時間系の制御 -伝達関数によるアプローチ-
2.1 PID制御
 2.1.1 フィードバック制御系
 2.1.2 PID制御
2.2 スミス法とIMC制御
 2.2.1 スミス法
 2.2.2 IMC制御
 2.2.3 スミス法とIMC制御の共通点
演習問題

3.むだ時間系の制御 -状態予測制御によるアプローチ-
3.1 状態予測制御
 3.1.1 状態予測制御:状態フィードバックの場合
 3.1.2 状態予測制御:オブザーバを用いる場合
3.2 極配置
 3.2.1 状態予測制御と極配置:状態フィードバックの場合
 3.2.2 状態予測制御と極配置:オブザーバを用いる場合
 3.2.3 安定度指定法
3.3 最適レギュレータ
3.4 サーボ系の構成
 3.4.1 サーボ系の基本的な考え方
 3.4.2 サーボ系の構成:状態フィードバックの場合
 3.4.3 サーボ系の構成:オブザーバを用いる場合
3.5 H∞制御
 3.5.1 H∞ノルム
 3.5.2 H∞制御問題
 3.5.3 状態予測を用いたH∞制御
3.6 ロバスト安定:加法的摂動と乗法的摂動
 3.6.1 スモールゲイン定理
 3.6.2 加法的摂動
 3.6.3 加法的摂動に対するロバスト安定化
 3.6.4 乗法的摂動
 3.6.5 乗法的摂動に対するロバスト安定化
 3.6.6 補助的な調整法
演習問題

4.分布定数系
4.1 分布定数系の制御の概念
4.2 工学的分類
 4.2.1 熱拡散系
 4.2.2 波動系
 4.2.3 輸送型分布系(単管・並流熱交換器)
 4.2.4 向流熱交換器
 4.2.5 フレキシブルアーム(オイラー-ベルヌーイ梁)
 4.2.6 工学的分類の特徴
4.3 分布定数系の近似
 4.3.1 差分法
 4.3.2 重み付き残差法
演習問題

5.輸送型分布定数系
5.1 単管熱交換器
 5.1.1 単管熱交換器のダイナミクス
 5.1.2 輸送型分布定数系とむだ時間系
 5.1.3 制御実験結果
5.2 向流熱交換器
 5.2.1 熱交換器のダイナミクス
 5.2.2 重み付き残差法による状態推定
 5.2.3 固有関数展開によるフィードバック則
演習問題

6.振動系
6.1 柔軟ビーム
6.2 厳密な数式モデルの導出
6.3 モード解析
 6.3.1 拘束モード法による解析
 6.3.2 非拘束モード法による解析
 6.3.3 拘束モード法と非拘束モード法
6.4 近似モデルの構成
 6.4.1 基本的な考え方
 6.4.2 拘束モードによるモード展開
 6.4.3 非拘束モードによるモード展開
 6.4.4 近似モデルの導出
6.5 制御系設計とスピルオーバ
 6.5.1 制御モードと剰余モード
 6.5.2 制御スピルオーバ
 6.5.3 観測スピルオーバ
 6.5.4 スピルオーバ不安定
 6.5.5 センサ・アクチュエータコロケーション
演習問題

引用・参考文献
演習問題の解答
索引

掲載日:2020/12/14

「計測と制御」2020年12月号広告