スペースクラフトの制御

システム制御工学シリーズ 13

スペースクラフトの制御

本書は人工衛星の姿勢制御について,力学と制御工学の二つの観点から系統的に述べた。スピン衛星の安定性,古典制御・現代制御による制御系の設計法,大形衛星のロバスト制御など,基礎から最先端の技術を,例題を示して解説した。

ジャンル
発行年月日
1999/03/10
判型
A5
ページ数
192ページ
ISBN
978-4-339-03313-7
スペースクラフトの制御
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定価

2,640(本体2,400円+税)

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本書は人工衛星の姿勢制御について,力学と制御工学の二つの観点から系統的に述べた。スピン衛星の安定性,古典制御・現代制御による制御系の設計法,大形衛星のロバスト制御など,基礎から最先端の技術を,例題を示して解説した。

本書は,スペースクラフトの制御の基本について書かれた教科書である。スペースクラフトとは,人工衛星,宇宙ステーション,月・惑星探査機など,宇宙空間を飛行する宇宙機の総称である。スペースクラフトの制御には二つの分野がある。一つは軌道の制御であり,もう一つは姿勢の制御である。本書ではスペースクラフトの姿勢制御を扱う。

この分野の優れた邦文の教科書や解説書が,近年では少なからず出版されるようになってきた。それは,宇宙工学という言葉が持つ魅力もさることながら,宇宙開発がわが国に定着し日常生活とのつながりが密接になってきたことと,そのための技術が着実に進歩してきたことの賜物であると考えている。

本書の執筆にあたっては,つぎの三つのことに留意した。

一つ目は,スペースクラフトの制御について述べるためには,その甚盤となる力学についての記述が不可欠であろうということである。スペースクラフトの制御は,力学的な安定性を受動的に得るところから始まっている。それが時代の要請に従って徐々に,力学的な特徴をうまく生かしながら,能動的なフィードバック制御に置き換えられて今日に至っている。その経緯を理解していただきたかったことと,将来に問題となってくる新しいスペースクラフトの制御に取り組むときにも,力学を使って厳密にモデルを作ることは避けて通れるものではないと考えたからである。

二つ目は,スペースクラフトの制御を制御工学の観点から見てみたいと考えたことである。スペースクラフトの進化に従って,その制御系の設計法にも多くの課題が与えられてきた。スペースクラフトの制御はつねに制御工学とともに進歩してきたという側面がある。このため,古典制御,最適制御,ロパスト制御が宇宙工学において必要となってきた動機とその適用法を示したいと考えた。

三つ目は,制御について言葉と数式だけで説明するのではなく,実際の設計例を付けたいと考えたことである。これによって,視覚的に理解を深めることができるように,主要な制御問題について数値例を作り,設計CADを使って実際に設計を行い,そのシミュレーションの結果を示すことにした。

このように,本書は力学と制御工学の接点でスペースクラフトの制御の問題をとらえるように配慮し,宇宙工学,制御工学を学ばれる学部およぴ大学院の学生と技術者を対象として執筆された。本書を学ぶためには,古典制御,現代制御とロパスト制御について読者がある程度の知識をすでに持っていることが望ましいが,それらの碁礎事項についても本文中で説明してあるので,巻末の参考文献を参照しながら修得できるように配慮したつもりである。

なお,本書を執筆する機会を与えていただいた大阪大学池田雅夫教授,宇都宮大学足立修一助教授に末筆ながら深謝したい。また構造の振動力学,衛星の運動方程式については,それぞれ,航空宇宙技術研究所の小松敬治,山口功の両氏の日頃からの教えに負うところが多い。最後に終始,筆者を叱咤激励いただいたコロナ社の方々にはたいへんご苦労をおかけした。お詫ぴとともに感謝したい。

1999年1月
木田 隆

1. 宇宙工学入門
 1.1 人工衛星とは
  1.1.1 利用分野
  1.1.2 軌道
 1.2 軌道への投入
  1.2.1 ロケットの構成
  1.2.2 地上から静止軌道へ
  1.2.3 ロケットの誘導・制御
 1.3 人工衛星の姿勢制御
  1.3.1 スペースクラフトの構成
  1.3.2 初期捕捉
  1.3.3 定常制御
  1.3.4 人工衛星の精度
 1.4 まとめと補足
2. 力学と制御工学の基礎
 2.1 力学
  2.1.1 キネマティクス
  2.1.2 ダイナミクス
 2.2 制御工学
  2.2.1 システム理論
  2.2.2 制御系の設計
 2.3 まとめと補足
 演習問題
3. スピン衛星
 3.1 スピン衛星の運動
  3.1.1 運動方程式
  3.1.2 スピン衛星の安定性
  3.1.3 スピン衛星の運動
 3.2 スピン衛星の安定化
  3.2.1 エネルギー消散と漸近安定性
  3.2.2 マスダンパによる安定化
 3.3 スピン衛星の制御
 3.4 まとめと補足
 演習問題
4. 3軸衛星
 4.1 3軸衛星の運動
 4.2 2重スピン衛星
  4.2.1 運動方程式と安定性
  4.2.2 マスダンパによる安定化
  4.2.3 ピッチ軸の制御
 4.3 バイアスモーメンタム衛星
  4.3.1 運動方程式
  4.3.2 制御系の設計
 4.4 ゼロモーメンタム衛星
  4.4.1 運動方程式
  4.4.2 制御系設計
 4.5 まとめと補足
 演習問題
5. 大形衛星
 5.1 大形衛星の運動
  5.1.1 弾性振動
  5.1.2 運動方程式
  5.1.3 コロケーションと可制御性・可観測性
 5.2 大形衛星の安定化
  5.2.1 漸近安定性
  5.2.2 定係数の出力フィードバック制御
 5.3 大形衛星の制御
  5.3.1 モデル低次元化
  5.3.2 動的な出力フィードバック制御
 5.4 まとめと補足
 演習問題

  引用・参考文献
  演習問題の解答
  索引

木田 隆

木田 隆(キダ タカシ)

博士(工学)(東京大学 1994年)

経歴
1973年 東京大学工学部計数工学科卒業
同年 科学技術庁航空宇宙技術研究所 研究員
1996年 電気通信大学電気通信学部 教授
2015年 電気通信大学 名誉教授,現在に至る

研究分野
人工衛星の姿勢制御理論の研究と教育を行ってきた.また,宇宙開発事業団(現JAXA)との共同研究として,スキャン型地球センサのTT500Aロケットによる性能評価試験(1982年),技術試験衛星6号機(1995年),8号機(2009年~2010年)を用いた人工衛星のロバスト制御の軌道上実験などを実施した.

主な著書
スペースクラフトの制御(1999),コロナ社.
フィードバック制御の基礎(2003),培風館.
航空宇宙工学便覧第3版(2005,分担執筆),丸善.
人工衛星の力学と制御ハンドブック(2007,編集・分担執筆),培風館.
制御の事典(2007,編集・分担執筆)朝倉書店.

掲載日:2020/12/14

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