固体物理と半導体物性の基礎

固体物理と半導体物性の基礎

固体物理や半導体物性に関する基本的な知識を習得できることをめざし、発光ダイオードやトランジスタの動作を理解できるよう工夫した

ジャンル
発行年月日
2017/03/16
判型
A5
ページ数
222ページ
ISBN
978-4-339-00896-8
固体物理と半導体物性の基礎
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定価

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

本書は,大学における1年間の講義で固体物理と半導体物性に関する基本的な知識を習得できることを目標とし,発光ダイオードやトランジスタの動作を理解できるための必要最小限の内容とした。半導体物性を主に学びたい方は,第8章の「半導体材料とバンド構造」から学習を始めて,固体物理に不明な点があれば,適宜,前の章を振り返るという学習方法をお薦めしたい。本書の構成は以下の通りである。

1章「結晶構造」では,固体物理を理解するうえで必要な結晶に関連する基礎知識を紹介する。
2章「回折条件と逆格子」では,結晶による波の散乱を説明し,散乱波(反射波)の振幅が大きくなる回折条件について説明する。そして,結晶の評価やバンド理論を進めるうえで必要になる逆格子の考え方を紹介する。
3章「ブリルアンゾーン」では,結晶評価やバンド計算を進めるうえで必要となるブリルアンゾーンの考え方を説明し,まずは,仮想的な1 次元結晶格子におけるブリルアンゾーンの例を紹介する。その後,2次元および3次元結晶格子におけるブリルアンゾーンの例を紹介する。
4章「フォノン」では,格子の振動に関連する仮想的な粒子であるフォノンの考え方を紹介し,その特性を波数kを使って説明する。そして,フォノンによる固体の比熱の性質を紹介する。
5章「金属の自由電子モデル」では,金属内を自由に動き回る伝導電子を念頭に置いて,電子の性質を紹介する。
6章「バンド理論」では,金属,半導体,絶縁体におけるそれぞれの電気伝導特性を説明するために必要なバンド理論を紹介する。
7章「固体内の電気伝導」では,固体内の電気伝導に関する現象を紹介し,その現象を引き起こすメカニズムを解説する。特に,電気伝導に大きな影響を及ぼす有効質量や移動度に注目して説明する。
8章「半導体材料とバンド構造」では,半導体材料を紹介するとともに,6章で紹介した半導体のバンド構造についてもう少し詳しく説明する。
9章「半導体中のキャリア濃度」では,初めに,半導体の状態密度とボルツマン分布を使って,不純物を含まない真性半導体中のキャリア濃度を計算し,その後で,真性半導体に不純物を混ぜる不純物ドーピングについて説明する。そして,この不純物ドーピングを行った場合に,半導体中のキャリア濃度やフェルミ準位の位置がどのように変化するかについて紹介する。
10章「半導体中の少数キャリア」では,半導体における電気伝導に関連するドリフト電流と拡散電流について説明する。そして,バイポーラトランジスタや発光ダイオード(LED)を動作させる際に利用する少数キャリアの性質について紹介する。
11章「pn接合とショットキー接合」では,バイポーラトランジスタや発光ダイオード(LED)で使われているpn接合のエネルギーバンド図について説明する。そして,pn接合ダイオードのエネルギーバンド図に対応する静電ポテンシャル(電位)を計算し,ダイオードにおける各種パラメータを測定することができる容量-電圧(C-V)特性を紹介する。さらに,整流性を示すpn接合ダイオードの電流-電圧(I-V)特性について定量的な取扱いを説明する。最後に,ショットキー接合ダイオードの特性についても紹介する。
12章「トランジスタ」では,初めに,第11章で説明したpn接合を利用したバイポーラトランジスタを紹介する。続いて,同じトランジスタであっても,バイポーラトランジスタとは異なる原理で動作する電界効果トランジスタを紹介する。
13章「ヘテロ接合と半導体光デバイス」では,初めに,二つの異なる物質を接合させたヘテロ接合の構造や特徴などについて説明し,その後,これを利用した光デバイスについて紹介する。

本書では,各章の内容を振り返って確認するために,それぞれの章末に演習問題を用意してある。ほとんどの演習問題は本文に書いてあることの確認事項なので,本書にはあえて解答を掲載していない。演習問題の解答に対するヒントはこのウェブサイトの左側にある関連資料に掲載してあるので,必要に応じてダウンロードして,解答の際の参考にしてほしい。

われわれの身の周りにある装置や部品には,半導体や金属などの固体材料で作られた数多くのデバイスが使われている。これらの固体材料はわれわれの生活を快適なものにしてくれており,現在のエレクトロニクス産業を支えているといっても過言ではない。もし,半導体や金属材料がこの世からなくなれば,われわれの生活は成り立たない。

このような半導体や金属材料といった固体材料の性質を理解するためには,固体物理と半導体物性に関する基本的な知識を習得することが重要である。そこで,専門課程へ進む前の大学2年生,あるいは,専門課程に進んだばかりの大学3年生の読者の皆さんを対象に,固体物理と半導体物性に関する基本的な知識を習得できることを目標として,本書を執筆することにした。本書の内容は大学における1年間の講義に対応することを想定しているので,発光ダイオードやトランジスタの動作を理解できるための必要最小限の内容に留めることにした。このようなことから,高等専門学校における高学年での固体物理と半導体物性に関する1年間の講義,あるいは,社会に出てから半導体関連の業務に携わる方々に対してもよい入門書になると思う。特に,半導体物性を主に学びたい方は第8章の「半導体材料とバンド構造」から学習を始めて,固体物理に不明な点があれば,適宜,前の章を振り返るという学習方法もある。そして,本書を活用して固体物理や半導体物性を学習した後に,さらに深く学びたい方は,C.キッテルの『キッテル固体物理学入門』やS.M.ジィーの『半導体デバイス─基礎理論とプロセス技術─』などの教科書を使って学んでいただきたい。

筆者は,大学および大学院において,本書で紹介する固体物理と半導体物性を学んだ。また,大学院卒業後は,30年間以上にわたって,企業や大学において発光ダイオードやトランジスタなどの半導体に関する最先端の基礎研究を行ってきた。そして,このような研究を行った過程で,大学の専門課程における必要な知識,あるいは専門課程に進む前に学んでおくべきことを知ることもできた。この経験を活かすとともに,入門者にとってなるべくわかりやすい説明にも気を配り,本書を執筆した次第である。

本書では,各章の内容を振り返って確認するために,それぞれの章末に演習問題を用意してある。ほとんどの演習問題は本文に書いてあることの確認事項なので,本書にはあえて解答を掲載していない。演習問題の解答に対するヒントはウェブサイトに掲載したので,必要に応じてダウンロードして,解答の際の参考にしてほしい。

読者の皆さんが本書を活用することにより,固体物理と半導体物性に関する基礎知識を身につけて,その後の皆さんのさらなる発展につながれば幸いである。

2017年1月牧本俊樹

1. 結晶構造
1.1 固体の特性
1.2 結晶の種類
 1.2.1 原子間の斥力と引力
 1.2.2 共有結合
 1.2.3 イオン結合
 1.2.4 金属結合
 1.2.5 水素結合
 1.2.6 ファン・デル・ワールス結合
 1.2.7 結合エネルギーの大きさの比較
1.3 結晶の構造
 1.3.1 結晶に関する専門用語
 1.3.2 ブラベ格子
 1.3.3 ミラー指数
 1.3.4 単純立方格子における代表的なミラー指数の例
 1.3.5 一般の結晶格子におけるミラー指数
1.4 2次元結晶格子
 1.4.1 2次元格子点の表現方法
 1.4.2 2次元の基本単位格子
1.5 ウィグナー-サイツ・セル
1.6 3次元結晶格子
 1.6.1 3次元格子点の表現方法
 1.6.2 単純立方格子における基本単位格子
 1.6.3 体心立方格子における基本単位格子
 1.6.4 面心立方格子における基本単位格子
演習問題

2. 回折条件と逆格子
2.1 ブラッグの法則
2.2 フーリエ級数
 2.2.1 1次元結晶中の電子濃度
 2.2.2 3次元結晶への拡張
 2.2.3 3次元結晶における周期性の条件
2.3 逆格子
 2.3.1 逆格子の基本並進ベクトル
 2.3.2 逆格子ベクトル
 2.3.3 実格子と逆格子の並進ベクトルの関係
2.4 ラウエ方程式と回折条件のベクトル表現
 2.4.1 結晶面による波の散乱
 2.4.2 ラウエ方程式
 2.4.3 回折条件のベクトル表現
2.5 逆格子ベクトルの性質
 2.5.1 2次元結晶格子の逆格子ベクトル
 2.5.2 ブラッグの法則との関係
演習問題

3. ブリルアンゾーン
3.1 ブリルアンゾーン
 3.1.1 波の回折条件
 3.1.2 ベクトルkを変数とした逆格子空間
3.2 1次元結晶格子の逆格子とブリルアンゾーン
3.3 2次元正方形格子の逆格子とブリルアンゾーン
 3.3.1 2次元正方形格子に対する逆格子の基本並進ベクトル
 3.3.2 2次元正方形格子の逆格子におけるブリルアンゾーン
3.4 単純立方格子の逆格子とブリルアンゾーン
 3.4.1 単純立方格子に対する逆格子の基本並進ベクトル
 3.4.2 単純立方格子の逆格子におけるブリルアンゾーン
3.5 体心立方格子の逆格子とブリルアンゾーン
 3.5.1 体心立方格子に対する逆格子の基本並進ベクトル
 3.5.2 体心立方格子の逆格子におけるブリルアンゾーン
3.6 面心立方格子の逆格子とブリルアンゾーン
 3.6.1 面心立方格子に対する逆格子の基本並進ベクトル
 3.6.2 面心立方格子の逆格子におけるブリルアンゾーン
演習問題

4. フォノン
4.1 フォノンに関連する予備知識
 4.1.1 結晶内で相互作用する主な粒子
 4.1.2 波の種類
4.2 同種原子からなる1次元格子中を伝わる波
 4.2.1 運動方程式
 4.2.2 運動方程式の解
 4.2.3 長波長領域における波の性質
4.3 二つの異種原子からなる1次元格子中を伝わる波
 4.3.1 運動方程式
 4.3.2 運動方程式の解
 4.3.3 ブリルアンゾーンの原点におけるω
 4.3.4 第1ブリルアンゾーン端におけるω
 4.3.5 長波長領域におけるω-k分散関係
4.4 音響フォノンと光学フォノン
 4.4.1 ブリルアンゾーンの原点におけるフォノンの振動
 4.4.2 フォノンの種類
4.5 フォノン比熱
 4.5.1 比熱のアインシュタインモデル
 4.5.2 高温での比熱
 4.5.3 デバイのT3法則
演習問題

5. 金属の自由電子モデル
5.1 シュレディンガーの波動方程式
5.2 1次元井戸型ポテンシャル中の電子
 5.2.1 波動関数の境界条件
 5.2.2 波動方程式と解
 5.2.3 得られた計算結果の物理的意味
 5.2.4 フェルミエネルギー
5.3 立方体に閉じ込められた電子
 5.3.1 3次元シュレディンガーの波動方程式と解
 5.3.2 フェルミエネルギー
 5.3.3 状態密度
5.4 フェルミ-ディラックの分布関数
演習問題

6. バンド理論
6.1 エネルギーバンド図
 6.1.1 バンドギャップとエネルギーバンド
 6.1.2 金属,半導体,絶縁体のエネルギーバンド図
 6.1.3 絶縁体における電気伝導
 6.1.4 真性半導体における電気伝導
 6.1.5 金属における電気伝導
6.2 ブロッホの定理
 6.2.1 リング状の1次元結晶
 6.2.2 3次元結晶でのブロッホの定理
6.3 クローニッヒ-ペニーのモデル
 6.3.1 周期的ポテンシャルとシュレディンガーの波動方程式の解
 6.3.2 周期的ポテンシャルの近似
6.4 バンドギャップの形成
 6.4.1 電子のエネルギー
 6.4.2 E-k分散関係
 6.4.3 還元ゾーン形式
6.5 半導体中での光吸収
 6.5.1 半導体における光吸収過程
 6.5.2 直接遷移型半導体における光吸収
 6.5.3 間接遷移型半導体における光吸収
演習問題

7. 固体内の電気伝導
7.1 有効質量
7.2 オームの法則
7.3 ドルーデの理論
7.4 磁場内のキャリアの運動
演習問題

8. 半導体材料とバンド構造
8.1 半導体材料
 8.1.1 半導体の特長
 8.1.2 半導体の種類
 8.1.3 半導体混晶
 8.1.4 ベガード則
8.2 半導体デバイスへの応用
 8.2.1 半導体物性と半導体デバイスの関連
 8.2.2 発光デバイスに使われる半導体材料
 8.2.3 受光デバイスに使われる半導体材料
 8.2.4 トランジスタに使われる半導体材料
8.3 E-k分散関係における電子の遷移
 8.3.1 フォトンによる電子の遷移
 8.3.2 フォノンによる電子の遷移
 8.3.3 直接遷移型半導体と間接遷移型半導体における電子遷移過程の違い
8.4 実際の半導体におけるE-k分散関係
 8.4.1 3次元結晶におけるブリルアンゾーン端の名称
 8.4.2 実際の直接遷移型半導体におけるE-k分散関係とフェルミ面
 8.4.3 実際の間接遷移型半導体におけるE-k分散関係とフェルミ面
演習問題

9. 半導体中のキャリア濃度
9.1 ボルツマン分布での近似
9.2 真性半導体の伝導帯における電子濃度
 9.2.1 伝導帯における電子のエネルギーと状態密度
 9.2.2 伝導帯における電子濃度
9.3 真性半導体の価電子帯における正孔濃度
 9.3.1 価電子帯における正孔のエネルギーと状態密度
 9.3.2 価電子帯における正孔濃度
9.4 真性半導体の性質
 9.4.1 np積
 9.4.2 真性半導体中のキャリア濃度
 9.4.3 真性半導体のフェルミ準位
 9.4.4 真性半導体のフェルミ準位とnおよびpの関係
9.5 半導体への不純物ドーピング
 9.5.1 Ⅳ族半導体へのⅤ族元素のドーピング
 9.5.2 Ⅳ族半導体へのⅢ族元素のドーピング
9.6 ドーピングした不純物の活性化エネルギー
 9.6.1 ボーアの水素原子モデル
 9.6.2 不純物の活性化エネルギー
9.7 不純物をドーピングした半導体のフェルミ準位
 9.7.1 n型半導体中のフェルミ準位
 9.7.2 p型半導体中のフェルミ準位
9.8 n型半導体における電子濃度の温度依存性
 9.8.1 低温領域
 9.8.2 中程度の温度領域
 9.8.3 高温領域
演習問題

10. 半導体中の少数キャリア
10.1 移動度を決定する要因
 10.1.1 移動度を決定する主な散乱要因
 10.1.2 マティーセンの法則
 10.1.3 実際の半導体中の移動度の温度特性
10.2 ドリフト電流
10.3 拡散電流
 10.3.1 フィックの法則
 10.3.2 正孔による拡散電流密度
 10.3.3 電子による拡散電流密度
10.4 アインシュタインの関係式
10.5 過剰少数キャリア
10.6 少数キャリアの連続の式
 10.6.1 過剰少数キャリア濃度の時間変化を決める要因
 10.6.2 n型半導体中の微小領域における少数キャリアによる電流
 10.6.3 p型半導体中の微小領域における少数キャリアによる電流
 10.6.4 n型半導体中の少数キャリアの生成と消滅
 10.6.5 p型半導体中の少数キャリアの生成と消滅
 10.6.6 1次元における少数キャリアの連続の式
 10.6.7 3次元における少数キャリアの連続の式
10.7 少数キャリアの連続の式の応用例
演習問題

11. pn接合とショットキー接合
11.1 pn接合ダイオードの概要
11.2 pn接合の形成
11.3 階段型pn接合における電子のポテンシャルエネルギー
 11.3.1 階段型pn接合
 11.3.2 ポアソン方程式と電荷密度
 11.3.3 静電ポテンシャルの計算
11.4 電圧印加時の空乏層幅と接合容量
 11.4.1 電圧印加時の空乏層幅
 11.4.2 接合容量
 11.4.3 C-V特性を用いたpn接合ダイオードのパラメータ測定
11.5 pn接合における順方向バイアス時の拡散電流
 11.5.1 順方向バイアス時における空乏層端での少数キャリア濃度
 11.5.2 順方向バイアス時の拡散電流
11.6 実際のpn接合ダイオードの特性
11.7 ショットキー接合
 11.7.1 順方向バイアス時の電流
 11.7.2 ショットキー接合の形成
 11.7.3 空乏層中の静電ポテンシャルの計算
 11.7.4 ショットキーダイオードの接合容量
 11.7.5 ショットキー接合のI-V特性
演習問題

12. トランジスタ
12.1 バイポーラトランジスタの構造と動作原理
 12.1.1 バイポーラトランジスタの構造
 12.1.2 npn型バイポーラトランジスタのエミッタ接地回路
 12.1.3 バイポーラトランジスタにおける増幅作用
12.2 バイポーラトランジスタの設計指針
 12.2.1 電流成分を決める三つのパラメータ
 12.2.2 npn型バイポーラトランジスタでの電子の流れと設計指針
12.3 エミッタ接地回路のI-V特性
12.4 電界効果トランジスタの構造と動作原理
 12.4.1 電界効果トランジスタの構造
 12.4.2 nチャネルMOSFET(n型MOSFET)の動作原理
 12.4.3 ゲート電極下の全電荷密度とゲート電圧の関係
 12.4.4 n型MOSFETの基本特性
12.5 電界効果トランジスタのI-V特性
 12.5.1 MOSFETのI-V特性
 12.5.2 相互コンダクタンス
演習問題

13. ヘテロ接合と半導体光デバイス
13.1 ヘテロ接合と低次元構造
 13.1.1 ホモ接合とヘテロ接合
 13.1.2 低次元構造
13.2 半導体中での電子とフォトンの相互作用
13.3 半導体中での光の吸収
13.4 光吸収過程に関連する現象
演習問題

付録
A.1 ベクトルの内積と外積
A.2 波に関連する関係式
A.3 光に関連する関係式と情報
A.4 フックの法則
A.5 x~0の場合のテイラー展開
A.6 f(x+dx)とf(x)の関係
A.7 三角関数に関連する公式
A.8 本書に関連する情報

引用・参考文献
索引