ラプラス変換と電気回路

ラプラス変換と電気回路

ラプラス変換の電気回路への応用の基礎と有用性を単刀直入に,容易に理解してもらえるよう配慮した。

ジャンル
発行年月日
2014/09/30
判型
A5
ページ数
230ページ
ISBN
978-4-339-00868-5
ラプラス変換と電気回路
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定価

3,740(本体3,400円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

本書は,株式会社昭晃堂から発行されていた「ラプラス変換と電気回路」(ISBN978-4-7856-1087-6)を,コロナ社が継続して発行したものである。

ラプラス変換あるいはその応用に関する既刊の書物には優れたものが多く,それぞれに特徴をもっている. ところで一般に電気に関係する人々の関心は,ほとんど応用にあるのだろうが,それかといってあまり応用に偏った書物ではいささかものたりなく,なんらかの不安がつきまとう. しかし数学的に厳密さをもった書物では多くの場合応用に到達するまでに息切れしないでもない.

われわれがラプラス変換を電気回路に応用する一つの重要な目的の一つは,回路素子が,時間的に不変でしかも回路に加えられた電圧,回路に流れる電流の大きさによって,その値が変らないいわゆる線形回路の過渡現象を,簡単にしかも正しく求めることである. 一般に,抵抗Rのほかに,インダクタンスL(M)や静電容量Cを含む電気回路の諸量(電圧,電流,電荷)の,過渡時での値を求めるには,微積分方程式をたて,それを解かなければならない. しかしこの方法では回路が多少複雑になれば,微積分方程式をたてることすらかなりやっかいなことが多く,特にそれを古典的な方法で解く場合には,一般解を求めた後,それに含まれる積分定数を決めるために,初期値を求めるときなど,簡単な回路であっても場合によっては相当な苦労をしなくてはならない.

ところで,正弦波交流を扱う交流理論では,時間的に不変な線形回路の定常状態での諸量を求めるが,その場合は,回路の各素子に対してR,jωL(jωM),1/jωC (ω,角周波数)なる複素インピーダンスを定義し,問題を時間領域の回路から,ω領域の回路に移しかえて,これに回路解析に関する諸法則,定理を適用すれば,単なる複素数の計算によってω領域での回路の諸量が求められ,必要があれば逆にそれらを時間領域の値に移しかえることも容易であった. したがって,この場合は微積分方程式が解の出発点であることを考えることすら必要なかった.

それでは,回路の過渡現象が,パルス,三角波,矩形波などのほか,特に古典的な解法では,解を求めることが困難な波形の電源が加えられたときにも,交流理論の場合と同様な手法によって求められないだろうか. それが,ラプラス変換を用いることによって可能なのである.

すなわちラプラス変換を用いれば,回路の各素子に対して,R,sL(sM),1/sC(sは実数あるいは一般にσ+jωなる複素数で,σ,ωは正の定数)のように一般化されたインピーダンスが定義され(jωL,1/jωCは正弦波交流に対してのみ定義される),初期値に関しては単にそれまでにLに鎖交していた磁束,Cに蓄積されていた電荷を考えれば初期値に関する新たな電源が導入されて,初期値の問題については変換の段階で解決され,時間領域の回路は,s領域の回路に移される. したがってこの場合もいろいろ微積分方程式をたて,それを解くという手順は全く不必要となり,書き換えられたs領域の回路に対して,直接交流理論の場合と同様に回路解析に関する諸法則,定理を適用し,しかも単なる代数計算を行い,s領域での回路の諸量を求め,これを逆ラプラス変換(時間関数とs関数との対応表を使って)することにより,時間領域での過渡値はもちろん定常値も求められるのである.

ところで,この書物を書く動機となったのは,実はこれまでに,多くの著者によって紹介されたラプラス変換の電気回路への応用の基礎と有用性をいま少し単刀直入に,しかも容易に理解してもらえるような解説書があったなら,と考えたからで,高度なことは他書におまかせすることとして筆をとった. 書き上げて,ふりかえれば,かんばしい出来ばえではなかった,しかし初志はいくらか貫けたように思われる. なお十分とはいえないが,ラプラス変換に関する他の重要で,基礎的な応用についても,幾つかふれておいた. この書が,ラプラス変換の電気回路への応用についての入門書として,また電気回路に類推されて,機械振動系,音響系の回路が描けることがわかっているから,これらの方面を学ぶ初学者にも幾分なりとも役立てば幸いと思っている.

終りに本書は,これを書くに当って多くの優れた既刊の書物を参考にさせていただき,それらに負うところが非常に多い. これらの書物を巻末に掲げ著者ならびに,その出版社に対して深く感謝の意を表する.

1978年3月
著者

本書を発行していた昭晃堂が2014年6月に解散したことに伴い,この度,コロナ社より継続出版することになりました. 昭晃堂にて1978年9月の1刷発行から30刷までに至っておりますが引き続き多くの方にご拝読いただき役に立つならば,出版社としてこの上ない喜びです.
2014年8月

1.ラプラス変換
1.1 ラプラス変換と逆ラプラス変換
 f(t)=AのL変換
 f(t)=AtのL変換
 f(t)=ε^αtのL変換
 f(t)=Atε^αtのL変換
 定理[1] 加法定理
 定理[2] 推移定理
 f(t)=sin ωtのL変換
 f(t)=cos ωtのL変換
 f(t)=sinh atのL変換
 f(t)=cosh atのL変換
 f(t)の導関数df(t)/dtのL変換
 f(t)の不定積分∫(t)dtのL変換
 f(t)の定積分∫_0^t f(t)dtのL変換
 定理[3] 複素微分定理
 定理[4] 複素積分定理
 定理[5] 時間スケールの変更定理
1.2 基本的なf(t)関数のL変換
演習問題

2.逆ラプラス変換
2.1 Q(s)に重根を含まない場合
2.2 Q(s)に重根を含む場合
2.3 定理[6] ヘビサイドの展開定理
2.4 定理[7] 変形されたヘビサイドの展開定理
2.5 定理[8] 分母Q(s)に共役複素数の根をもつ場合のヘビサイドの展開定理
2.6 未定係数法による場合
2.7 視察による場合
2.8 定理[9] 相乗定理(ボレルの定理)
演習問題

3.簡単な回路の過渡現象
3.1 R,Lの直列回路と直流電源
3.2 定常値・過渡値・時定数
3.3 R,Lの直列回路の短絡
3.4 R,Cの直列回路と直流電源
3.5 R,Cの直列回路の放電
3.6 R,Lの直列回路と特殊な電源
演習問題

4.s領域の回路
4.1 L変換法での初期値と,その取扱い
4.2 基本的なs回路
4.3 Mを含むときのs回路
4.4 直流電源とR,Lの回路の例
4.5 直流電源とR,Cの回路の例
4.6 Mを含む回路の例
4.7 直流電源とL,Cを含む回路の例
4.8 正弦波交流の回路の例
演習問題

5.単位ステップ関数のL変換と応用
5.1 単位ステップ関数の定義とL変換
5.2 u(t-a)のL変換
5.3 u(t)-u(t-a)のL変換
5.4 単位ステップ関数と任意の時間関数との積の関数のL変換
5.5 定理[3] 変時定理
演習問題

6.周期関数のu(t)による表示とL変換
演習問題

7.特殊な波形の周波数入力の応答
演習問題

8.周期関数のL変換とフーリエ級数
演習問題

9.伝達関数
演習問題

10.単位インパルス関数のラプラス変換

11.z変換
11.1 f(t)のz変換の例
11.2 逆z変換
 F*(z)の逆z変換をzのべき級数に直して求める方法
 F*(z)の逆z変換を部分分数に分解して求める方法
11.3 z変換の応用
演習問題

演習問題解答
参考書
索引

川村 雅恭(カワムラ マサタダ)