要点がわかる 電磁気学

要点がわかる 電磁気学

  • 石井 望 新潟大准教授 博士(工学)

与えられた問題を,イメージに流されることなく,数学的な知識を駆使して,電磁気学の基本法則から自力で計算できるようになることが本書のねらいである。「過去のQ&A」では,理解しづらい点やつまづきやすい点が紹介されている。

ジャンル
発行年月日
2009/04/30
判型
A5
ページ数
222ページ
ISBN
978-4-339-00806-7
要点がわかる 電磁気学
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定価

3,080(本体2,800円+税)

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与えられた問題を,イメージに流されることなく,数学的な知識を駆使して,電磁気学の基本法則から自力で計算できるようになることが本書のねらいである。「過去のQ&A」では,理解しづらい点やつまづきやすい点が紹介されている。

電磁気学は,電気系技術者にとって,その基礎となる科目と位置付けられる。しかしながら,その記述にベクトル解析などの数学が多用されるために,とかく敬遠されがちな科目である。このため,イメージ重視の教科書が数多く出版されている。物理的にどのような現象であるのかを理解するためには,まずイメージを描くことが重要であり,それが読者・学生の強い要望となっている。ところが,演習問題や現実の問題に直面すると,何も先に進めないのも事実である。教科書に記述されている内容を覚え,イメージを構築したつもりになったにもかかわらず,応用する際に必要となる手がかりを探せないようである。その手がかりを与えるのが,手段としての数学であると著者は考えている。式の導出の過程を系統的に丁寧に追うことにより,式の意味するところが理解できるようになる。演習を積み重ねることで,やがては自分で定式化ができるようになる。このため,本書では,あえて他の教科書より式を多用し,式で説明できる事柄は式を利用するという立場をとっている。

電磁気学には,数学と物理の橋渡しをするさまざまなテクニックが登場する。本書では,それらのテクニックを紹介し,式を独力でトレースできるように配慮している。さらに,与えられた手順どおりに計算を進めれば,多少計算が面倒かもしれないが,最終的に答えが出てくるようにも配慮している。特に,付録C.に本書で利用する積分公式を載せたので,必要に応じて参照してほしい。また,手順や具体的な解答例だけではなく,それを一般化した結果も示してある。一般化することで,より高い視点から問題を考えることができ,つぎの展開を見通すことができるからである。

本書は,筆者が電磁気学の講義と演習を担当することになった1999年以来,講義終了後に実施してきた「Q&Aの質問票」に寄せられた疑問,質問,感想を基にまとめた講義ノートがベースとなっている。「過去のQ&Aから」は10年間にわたって蓄積したQ&Aデータの中から選んである。Q&Aデータの一部は本文にも取り込まれており,まさに本書は電磁気学を受講した学生との共同作業の成果といっても過言ではない。

紙面の都合で,勾配,発散,回転のベクトル微分演算子,線積分,面積分,体積分の扱い方,ガウスの発散定理,ストークスの定理などのベクトル解析に関して十分に記述できなかった。先に述べたように,ベクトル解析は電磁気学を記述するための数学的手段であり,その習得なしに電磁気学の理解を深めることは難しい。その意味で,電磁気学を学習する際には,ベクトル解析の教科書を一冊手元に置くことを勧めたい。本書と同じ趣旨で記述された教科書として,拙著「要点がわかるベクトル解析」(コロナ社)をあげておく。さらに,章末問題の解答についても巻末に略解を記載するにとどめた。解答例はコロナ社のホームページhttp://www.coronasha.co.jp/の本書関連ページからダウンロードできる。同ページから本書の書名をキーワード検索してほしい。

電磁気学は先生の数だけ教え方がある。学会でお会いする先生の言葉である。電磁気学の理論が確立してから1世紀以上経過したのにもかかわらず,その深遠さ故ということであろうか。ともあれ,著者の浅学非才により十分に記述できていないところが多々あると思われる。忌憚のないご意見やご批判をお寄せいただければ幸いである。

最後に,本書の執筆をお勧めいただいた新渇大学 山口芳雄教授に感謝申し上げます。また,執筆にあたり有益なご意見をいただいた新潟大学山田寛喜教授に感謝申し上げます。本書の出版にあたって,お軋話になったコロナ社に感謝の意を表します。誤字脱字のチェックなどに協力してくれた,研究室の大学院生,学部生に謝意を表します。

2009年3月
石井望

1. ベクトルと座標系
1.1 ベクトル
1.2 内積と外積
1.2.1 内積
1.2.2 外積
1.3 代表的な座標系
1.3.1 円筒座標系(ρ, φ, z)
1.3.2 球座標系(r, θ, φ)
1.4 線素・面素・体積素
1.4.1 線素
1.4.2 面素
1.4.3 体積素
章末問題

2. クーロンの法則
2.1 電荷分布
2.1.1 電荷の定義
2.1.2 電荷分布とその数学的表現
2.2 クーロンの法則
2.3 電荷分布と電界
2.3.1 点電荷による電界の定義
2.3.2 連続的な電荷分布による電界
2.3.3 代表的な電荷分布による電界
章末問題

3. ガウスの法則
3.1 電束
3.2 ガウスの法則
3.3 ガウスの法則の適用
3.4 発散とガウスの発散定理
3.4.1 発散
3.4.2 ガウスの発散定理
章末問題

4. 電位
4.1 電荷移動による仕事
4.2 電位差と電位
4.2.1 電位差
4.2.2 電位
4.3 電位の重ね合わせ
4.3.1 点電荷による電位
4.3.2 連続的に分布する電荷による電位
4.4 電位の勾配
4.5 ポアソンの方程式
章末問題

5. 導体・誘電体・静電容量
5.1 導体の性質
5.2 境界条件:自由空間と導体の境界における電界
5.3 電気影像法
5.4 誘電体の性質
5.5 誘電体内部における電界
5.6 境界条件:誘電体境界における電界
5.7 静電容量
5.8 電気的蓄積エネルギー
5.9 仮想変位と電界の及ぼす力
章末問題

6. 電流と抵抗
6.1 電流と電流密度
6.2 電流の連続性
6.3 オームの法則の微分形
章末問題

7. 定常磁界
7.1 ビオ・サバールの法則
7.1.1 アンペアの右ねじの法則
7.1.2 電流分布とその数学的表現
7.1.3 ビオ・サバールの法則とその数学的表現
7.1.4 ビオ・サバールの法則の積分形
7.2 アンペアの周回路の法則
7.2.1 鎖交
7.2.2 アンペアの周回路の法則の導出
7.2.3 アンペアの周回路の法則の適用
7.3 回転とストークスの定理
7.3.1 回転
7.3.2 ストークスの定理
7.4 磁界に関するガウスの法則
7.5 ベクトルポテンシャル
章末問題

8. 電磁力・磁性体・インダクタンス
8.1 運動電荷に作用する力
8.2 電流素片に作用する力
8.3 一様磁界中におけるループに作用する力とトルク
8.4 磁性体の性質
8.5 磁性体内部における磁界
8.6 境界条件:磁性体境界における磁界
8.7 インダクタンス
章末問題

9. 時間変化する電磁界
9.1 電磁誘導の法則
9.2 磁気的蓄積エネルギー
9.3 仮想変位と磁界の及ぼす力
9.4 変位電流
9.5 マクスウェルの方程式
9.6 ポインティングベクトル
章末問題

10. 一様平面波の初歩
10.1 フェザー表示と一様平面波
10.2 損失媒質中における一様平面波
章末問題

付録
A. ヘルムホルツの輸送定理
B. ベクトル公式
C. 積分公式
参考文献
章末問題略解
索引