電力システム工学の基礎

電力システム工学の基礎

  • 永田 武 広島工大教授 博士(工学)

本書は,電力システムの運用と計画のソフト面を強調した内容となっており,一部ソフトウェアコードも記述されている。また,例題や章末問題により,教科書としてはもちろん,学生や技術者の独学書としても適している。

ジャンル
発行年月日
2000/08/28
判型
A5
ページ数
192ページ
ISBN
978-4-339-00724-4
電力システム工学の基礎
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定価

2,750(本体2,500円+税)

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本書は,電力システムの運用と計画のソフト面を強調した内容となっており,一部ソフトウェアコードも記述されている。また,例題や章末問題により,教科書としてはもちろん,学生や技術者の独学書としても適している。

序文

本書は,大学,短大,高等専門学校の学生を対象として執筆したものであるが,電力会社やメーカーなどで電力システムの計画や運用,または制御用計算機システムの立案・設計・開発などに携わっている実社会の技術者の方々にとっても有益な内容となるように配慮してある。

「電力」という言葉から社会の人々が受けるイメージはどのようなものであろうか。おそらく,「非常に古臭いもの」とか「成熟分野なので面白い内容はない」というのが一般的であるように思われる。しかし,「電力」を「電力システム」としてとらえると,ほかの先端的な分野と同じく,非常に新鮮で面白いテーマが数多くある。本書では,従来の電力系統を構成するハード面の説明は別の成書に譲るとして,計算機を用いた電力システムの運用と計画のソフト面を強調した内容になっている。特に,電力系統制御の計算機システムの開発に携わった経験を有する著者の観点からの記述にも努めたつもりである。本書を読まれた方々が一人でも多く現在のコンピュータを主体とした電力システムへの理解を深められ,近年のエネルギー問題,環境問題,規制緩和などに代表される電力を取り巻く環境の変化に対応した新しい電力システムの構築に向けて挑戦されるきっかけになれば幸いである。

本書は,大学,短大,高等専門学校においては,週ーコマの半期で履修できる程度の内容になっているので,従来のハード面を中心としたI送配電工学」などに引き続く講義用として利用できる。また,重要な内容は例題と演習問題でカバーしてあるので,独学でも十分理解できると思われる。さらに,内容の理解を助けるために一部ソフトウェアの記述も行っている。使用言語は,制御分野で普及しているMATLABを使用したが,簡単な言語であるためプログラミングの知識がなくても,その内容は容易に理解できるであろう。

1章では,電力システムとその特徴について,電力を取り巻くエネルギー問題,環境問題,規制緩和などの話題を含めて記述した。2章では,電力システムの表現方法について記述した。3章は,電力システム解析の基本となる電力回路網方程式について記述し,解析の基本となるノードアドミタンス行列(Y行列)についてはその作成プログラムも示した。4章は,電力の計画・運用の実務において中心的な役割を果たしている電力潮流計算について記述し,ニュートン・ラフソン法によるプログラムも示した。5章は,電力システムの最適化問題の一つである経済負荷配分について記述した。無制約および制約条件付き非線形最適化問題の解法について説明し,経済負荷配分問題への適用方法を述べた。また,送電損失を考慮することのできる実用的なラムダ反復法を説明し,演習問題の解答としてそのプログラムも示した。6章は,電力系統の安定度について,発電機の同期運転の可否を論じる定態安定度,大外乱を対象とする過渡安定度,および電圧崩壊の有無を論じる電圧安定度について記述した。7章は,電力系統の制御の方法について,有効電力と周波数の制御ループである負荷周波数制御と,無効電力と電圧の制御ループを構成する自動電圧調整器について説明した。最後に,8章では,電力システムの新潮流として,電力システムに応用されている新しいソフトウェア技術の中から,知的情報処理,ニューラルネットワーク,ファジィ理論,メタヒューリスティックスの概要について記述した。また,付録には,わが国における電力の規制緩和の出発点となった平成7年(1995年)に改正された電気事業法の要約を記述した。

最後に,本書の出版の機会を与えていただいた株式会社コロナ社に厚くお礼申し上げます。

2000年6月
永田武

1. 電力システムとその特徴
 1.1 電力システム
 1.2 電力システムの特徴
 1.3 電力システムの現状
 1.4 電力システムにおける諸問題
 演習問題

2. 電力系統の表現方法
 2.1 単線結線図
 2.2 単相回路解析
 2.3 単位法
 2.4 単位法の3相への拡張
  2.4.1 変圧器を含まない場合の3相単位法表現
  2.4.2 変圧器を含む場合の3相単位法表現
 演習問題

3. 電力回路網方程式
 3.1 電力系統設備の表現
  3.1.1 送電線の表現
  3.1.2 変圧器の表現
  3.2.3 調相設備の表現
 3.2 ノード方程式
  3.2.1 簡単な電力システムのノード方程式
  3.2.2 一般的な電力システムのノード方程式
 3.3 Y行列作成プログラム
 演習問題

4. 電力潮流計算
 4.1 電力方程式
  4.1.1 電力方程式の考え方
  4.1.2 電力方程式の極座標表示
 4.2 非線形方程式の解法
 4.3 ニュートン・ラフソン法による電力潮流計算
  4.3.1 ニュートン・ラフソン法の電力潮流計算への適用
  4.3.2 ニュートン・ラフソン法のアルゴリズム
 4.4 ファースト・デカップル法による電力潮流計算
 4.5 送電線潮流と電力損失
 4.6 電力潮流計算プログラム
 演習問題

5. 経済負荷配分
 5.1 非線形最適化
  5.1.1 無制約最適化
  5.1.2 制約条件付き最適化
 5.2 火力機の特性
 5.3 経済負荷配分(送電損失無視)
  5.3.1 発電機出力限界無視
  5.3.2 発電機出力限界考慮
 5.4 経済負荷配分(送電損失考慮)
  5.4.1 定式化
  5.4.2 ラムダ反復法
 演習問題

6. 電力系統の安定度
 6.1 動揺方程式
 6.2 一機無限大母線系統モデル
 6.3 定態安定度
  6.3.1 非突極形(円筒形)同期発電機
  6.3.2 突極形同期発電機
  6.3.3 多機系統の定態安定度
 6.4 過渡安定度
  6.4.1 等面積法による解析法
  6.4.2 数値積分法
 6.5 電圧安定度
  6.5.1 電圧安定度の概要
  6.5.2 動的解析法
  6.5.3 静的解析法
 6.6 安定度向上策
 演習問題

7. 電力系統の制御
 7.1 負荷周波数制御
  7.1.1 系統特性定数
  7.1.2 連係線潮流-周波数特性
 7.2 自動発電機制御
 7.3 電圧・無効電力制御
  7.3.1 電圧・無効電力制御の必要性
  7.3.2 発電機の自動電圧調整器
  7.3.3 電圧・無効電力制御システム
 演習問題

8. 電力システムの新潮流
 8.1 知的情報処理
  8.1.1 知的情報処理の応用と歴史
  8.1.2 知識ベースと推論機構
  8.1.3 新しい知識表現
  8.1.4 高次推論
  8.1.5 ハイブリッド形インテリジェントシステム
 8.2 ニューラルネットワーク
  8.2.1 ニューロンのモデル
  8.2.2 階層型ニューラルネットワーク
  8.2.3 相互結合型ニューラルネットワーク
  8.2.4 ニューラルネットワークの学習
 8.3 ファジィ理論
  8.3.1 ファジィ集合論
  8.3.2 ファジィ関係
  8.3.3 ファジィ推論
 8.4 メタヒューリスティックス
  8.4.1 遺伝的アルゴリズム
  8.4.2 タブーサーチ
 8.5 インテイリジェントシステムの発展その可能性
 演習問題

付録 電気事業法
引用・参考文献
演習問題解答
索引