光学の基礎

光学の基礎

本書は,光学の基礎事項の理解を重視しつつ,光工学などにも適用できるようにアレンジした光学の入門書。Ⅰ部では光学全般,Ⅱ部では幾何光学,Ⅲ部では波動光学を扱い,全体を有機的に記述。演習問題と略解を掲載。

ジャンル
発行年月日
1997/10/20
判型
A5 上製
ページ数
288ページ
ISBN
978-4-339-00680-3
光学の基礎
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定価

4,070(本体3,700円+税)

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本書は,光学の基礎事項の理解を重視しつつ,光工学などにも適用できるようにアレンジした光学の入門書。Ⅰ部では光学全般,Ⅱ部では幾何光学,Ⅲ部では波動光学を扱い,全体を有機的に記述。演習問題と略解を掲載。



古今東西,名著といわれる光学の書が少なくない。しかし,ほとんどの書物は,光学の基礎をある程度知った後に,より深く光学を理解するときに役立つレベルのものや,専門家向けの実践書である。学部学生用の光学の入門書,あるいは実社会に入って,必要に迫られて光学を初めて学習するときの自習書に適したものは,きわめて少ない。このことが,本書を執筆するに至った動機の一つである。

光学の歴史は古いが,その大部分の期間は,実質上インコヒーレントな光を対象として発展してきた。1960年のレーザの発明により,コヒーレントな光が利用できるようになり,例えば干渉計測でも様相が一変している。一方,電子技術とりわけコンピュータ技術のめざましい進展が,各分野に変革をもたらしている。光学も例外ではなく,レンズの結像理論が,コンピュータ演算に適した行列で記述されるように変わってきている。光ファイバの出現で,従来,光は直進するものと教えられてきたものが,光の進行方向が自在に操られるようになった。このように,レーザ技術の普及やコンピュータ技術の進展,あるいは光ファイバの出現により,光学の内容そのものが少しずつ変化している。

レーザは,オプトエレクトロニクスの誕生と進展,あるいは光工学の普及にも影響を及ぼしている。昔の光学のイメージは,カメラや顕微鏡などの結像機器,あるいは分光器であろう。しかし,いまや光ディスクやレーザプリンタ,半導体露光装置やレーザ加工機などでも,光学設計の技術が不可欠である。また,特殊な分布をした光ファイバは結像作用を有し,この微小レンズは新しい応用分野を開拓している。このように,先端分野で光関連技術の重要性が増しており,光学の内容が昔より拡大している。

そこで本書では,光学の基礎事項の理解を重視しつつ,現代向けにアレンジした,光学の入門書を目標としている。光学全般にかかわる内容を1部におき,残りを,幾何光学と波動光学に分けた3部構成にしている。幾何光学は,光を光線としてとらえるものであり,光学機器設計や光導波路での光線伝搬などで有用である。波動光学は,文字通り光を波動としてとらえるもので,干渉・回折などの,基本現象の理解や応用で力を発揮する。幾何光学と波動光学は,それぞれが得意な領域をもっており,光学を理解・応用する上で,車の両輪の役目を果たしている。それぞれの概要は,II部とIII部の最初の部分で述べている。対象読者は,学部学生および社会人で初めて光学を学ぶ人に設定している。

本書の内容上あるいは構成上の特徴は,つぎのようにまとめられる。

(i)物理などでは,おばえる分量を減らし,できる限り少ない原理で応用範囲を広くしたいのが特徴である。そこで,光学の基本原理である,フェルマの原理とホイヘンスの原理を一般の書よりも多用して,どれだけの情報が引き出せるか,またどのように現象を理解するか試みた。(i)学習の便を考慮して,章立てを小分けした。また,わかりやすさを重視するため,説明の重複をあえて避けていない(節単位で,ある程度読めるように工夫した)。(iii)複雑な式の展開で,本文の理解には直接影響のない部分は,読みやすさを優先させるために付録に回した。光の電磁波論を最後の章にしたのも,同じ理由による。(iv)基本的には,通年授業を想定した分量に設定している。しかし,内容を適宜,取捨選択できるように,分量は少し多目にしてある。そこで,必要度を目次において*でグレードづけして,読者の便を図った。(V)本文の理解を確かめたり,あるいは理解を深める目的で,各章末に演習問題をつけ,略解を巻末に示した。

本書を出版するにあたり,終始お世話になったコロナ社の関係各位に厚くお礼を申しあげる。

1997年8月
左貝潤一

第I部 光学全般
1. 光学の基礎
1.1 光学の歴史
1.2 波動の基本的事項
1.3 屈折率と光速
1.4 位相・波面・光線の関係
  1.4.1 位相と波面
  1.4.2 波面と光線
1.5 光の反射と屈折
  1.5.1 反射と屈折の法則
  1.5.2 全反射
1.6 光のエネルギー
  1.6.1 電磁界エネルギー
  1.6.2 光強度
演習問題
第II部 幾何光学
2. 幾何光学の基礎
2.1 幾何光学特有の現象
2.2 幾何光学の基本概念
  2.2.1 光線とその特徴
  2.2.2 光路長
2.3 幾何光学の基本式
  2.3.1 アイコナール方程式
  2.3.2 光線方程式
  2.3.3 フェルマの原理
  2.3.4 基本式の特徴と相互関係
  2.3.5 光線の概念の適用限界
2.4 幾何光学での基本的性質
  2.4.1 光線の反射・屈折の法則
  2.4.2 マリュスの定理
  2.4.3 ポインティングベクトル
2.5 プリズムでの屈折と反射
2.6 レンズのプリズムへの分解
演習問題
3. 光線伝搬の行列表示
3.1 行列表示における基底ベクトル
3.2 簡単な光学系での行列表示
  3.2.1 平坦な境界面での屈折
  3.2.2 一様媒質での伝搬
  3.2.3 平行平面板
3.3 レンズ系での行列表示
  3.3.1 面と光線の定義
  3.3.2 曲面での屈折
  3.3.3 曲面間での光線伝搬
  3.3.4 レンズのシステム行列
3.4 球面鏡反射での行列表示
3.5 行列表示理論の適用範囲と特徴
演習問題
4. 球面光学系での結像理論
4.1 理想光学系
  4.1.1 薄肉レンズでの像作図法
  4.1.2 理想光学系
  4.1.3 共役点
4.2 光学系の主要点
  4.2.1 横倍率と焦点・主点
  4.2.2 角倍率と節点
  4.2.3 主要点
  4.2.4 レンズ系での像作図法
4.3 レンズの結像式と倍率
  4.3.1 結像式
  4.3.2 横倍率と縦倍率
4.4 具体的なレンズ系への適用例
  4.4.1 薄肉単レンズ
  4.4.2 厚肉単レンズ
  4.4.3 組合せレンズ
4.5 光学系の各種不変量
  4.5.1 アッベの零不変量
  4.5.2 ラグランジュ・ヘルムホルツの不変量
4.6 球面反射鏡
4.7 基準座標の変換
  4.7.1 レンズ系システム行列の基準座標変換
  4.7.2 主点基準での結像
  4.7.3 焦点基準での結像
演習問題
5. 光学系での諸概念
5.1 絞りと瞳空間
  5.1.1 開口絞り,瞳,主光線
  5.1.2 視野絞り
5.2 光学系の明るさ表示
5.3 焦点深度と被写界深度
演習問題
6. 波面光学
6.1 フェルマの原理
6.2 レンズの結像式とフェルマの原理
6.3 無収差反射鏡
  6.3.1 放物面鏡
  6.3.2 楕円面鏡
  6.3.3 双極面鏡
6.4 無収差レンズ
演習問題
7. 単色収差
7.1 収差の分類
7.2 光線収差
7.3 ザイデルの5収差
  7.3.1 球面収差
  7.3.2 コマ収差と正弦条件
  7.3.3 非点収差と像面湾曲
  7.3.4 ペッツヴァル和
  7.3.5 歪曲収差
7.4 収差に関係した諸概念
7.5 波面収差
  7.5.1 波面収差と光線収差の関係
  7.5.2 ザイデルの5収差の波面収差表示
  7.5.3 焦点はずれによる波面収差
7.6 非球面レンズ
7.7 光線追跡
演習問題
8. 色収差
8.1 色収差と色消し
  8.1.1 薄肉レンズに対する焦点距離の色収差と色消し
  8.1.2 縦の色収差
  8.1.3 横の色収差
8.2 光学ガラスとアッベ数
  8.2.1 アッベ数
  8.2.2 光学ガラス材料
  8.2.3 色消しレンズの具体例
  8.2.4 超色消し
演習問題
9. 光導波と分布屈折率レンズ
9.1 不均一媒質中の光線伝搬
9.2 2次元での光線伝搬式
9.3 2乗分布形光導波路での結像作用
  9.3.1 光線伝搬
  9.3.2 結像作用
9.4 分布屈折率レンズにおける光線伝搬の行列表示
演習問題
第III部 波動光学
10. 波動光学の基礎
10.1 波動伝搬の基礎原理
  10.1.1 ホイヘンスの原理
  10.1.2 均一媒質での波動伝搬
  10.1.3 不均一媒質での波動伝搬
10.2 位相速度と群速度
  10.2.1 位相速度
  10.2.2 波連と群速度
10.3 光波の屈折と反射
  10.3.1 フレネルの公式
  10.3.2 ブルースター角
  10.3.3 ストークスの定理
  10.3.4 光強度に関する反射・屈折
  10.3.5 全反射
演習問題
11. 偏光
11.1 偏光状態の表示
  11.1.1 偏光の分類
  11.1.2 ストークスパラメータと偏光度
  11.1.3 ジョーンズベクトル
11.2 媒質中の偏光伝搬
  11.2.1 固有偏光
  11.2.2 複屈折媒質での偏光伝搬
11.3 偏光素子
  11.3.1 偏光状態変換の記述
  11.3.2 各種偏光素子
  11.3.3 フレネルの菱面体
演習問題
12.  干渉の基礎:2光波干渉
12.1 干渉の起源
12.2 定在波
12.3 光束分割による干渉の分類
12.4 ヤングの干渉実験(波面分割による干渉)
12.5 平行平板による干渉
  12.5.1 透過波による干渉じま
  12.5.2 反射波による干渉じま
12.6 等厚干渉
  12.6.1 等厚干渉の原理
  12.6.2 ニュートン環
12.7 多色光による干渉
演習問題
13. 多光波干渉
13.1 無限小幅の多重スリットによる干渉
13.2 平行平板を含む3層構造での多重反射による干渉
  13.2.1 透過波による干渉
  13.2.2 反射波による干渉
13.3 ファブリぺロー干渉計
  13.3.1 基本特性
  13.3.2 干渉計固有の概念
13.4 光学薄膜
  13.4.1 反射防止膜
  13.4.2 干渉フィルタ
演習問題
14.回折の基礎
14.1 回折積分
  14.1.1 ヘルムホルツ・キルヒホッフの積分定理
  14.1.2 キルムホッフ近似
14.2 フラウンホーファー回折
14.3 フレネル回折
14.4 レンズによる回折
  14.4.1 レンズの位相変換作用
  14.4.2 レンズのフーリエ変換作用
14.5 フレネルの輪帯板
演習問題
15. 各種開口による回折
15.1 単一開口からのフラウンホーファー回折
  15.1.1 有限幅の単スリット
  15.1.2 矩形開口
  15.1.3 円形開口
15.2 複数の開口によるフラウンホーファー回折
  15.2.1 2個の有限幅スリットがある場合
  15.2.2 N個の有限幅スリットがある場合(回折格子)
  15.2.3 欠線
15.3 正弦波格子によるフラウンホーファー回折
15.4 単スリットによるフレネル回折
15.5 半無限平面へのフレネル回折
演習問題
16. 結像特性の評価
16.1 光学系の分解能
  16.1.1 円形開口からのフラウンホーファー回折
  16.1.2 レイリー・スパローの分解能
16.2 光学伝達関数
16.3 インコヒーレント結像での像評価関数
  16.3.1 点像分布関数
  16.3.2 光学伝達関数の物理的意味
  16.3.3 瞳関数
  16.3.4 瞳関数と光学伝達関数の関係
  16.3.5 光学伝達関数の具体例
16.4 コヒーレント結像での像評価関数
16.5 分解能と光学伝達関数の関係
演習問題
17. ホログラフィ
17.1 ホログラフィの原理
17.2 2光束ホロブラフィ
17.3 ホログラフィの特徴と応用
演習問題
18. 光の電磁界理論
18.1 電磁波の基本式と波動方程式
18.2 一様媒質中での電磁波の形式解
18.3 不連続面での境界条件
18.4 電磁解のエネルギー
演習問題
付録
A.フーリエ変換とその性質
B.アイコナール方程式の導出
C.レンズの結像式導出
D.焦点はずれによる波面収差
E.光源の位相揺らぎによる可干渉性
F.フレネル・キルヒホッフの回折理論
参考書
演習問題略解
索引

左貝 潤一(サカイ ジュンイチ)

NTTの基礎研究所を退職後、立命館大学理工学部教授に奉職。
現在は立命館大学大学院名誉教授・工学博士。

以下の著書がある。
【光学全般】
『光学の基礎』,コロナ社(1997)
『光の数理』,コロナ社(2021)

【通信】
『光通信工学』,共立出版(2000)
『通信ネットワーク概論』,森北出版(2018)

【光ファイバ・光導波路】
『導波光学』,共立出版(2004)
『フォトニック結晶ファイバ』,コロナ社(2011)
『光導波路の電磁界数値解析法』,森北出版(2015)

【光工学】
『光エレクトロニクス入門』, 森北出版(2014)

【光学関連分野】
『位相共役光学』,朝倉書店(1990)
”Phase Conjugate Optics,” McGraw-Hill (1992).
『光学機器の基礎』,森北出版(2013)
『光計測入門』,森北出版(2016)
『メタマテリアルのための光学入門』,森北出版(2017)

【電磁波工学】
『電磁波工学エッセンシャルズ -基礎からアンテナ・伝送線路まで-』,共立出版(2020)